問題だらけの東電のテレビ会議映像公開――情報隠蔽を許していいのか
2012年9月7日4:50PM
東京電力によるテレビ会議映像の公開への批判が収まらない。東電は七月三一日、当初は五日間としていた公開期間を約一カ月間に延長。大手メディアの閲覧用パソコンを一台から二台に増やし、要望に対応したと説明した。しかし根本的には何も解決していない。
東電は同意書に署名した報道機関や記者だけに閲覧を許可し、録音・録画・配信・撮影は認めていない。重要なのは閲覧の制限を設けず広く一般に公開し、複数の目で事故の検証を可能にすることだ。
東電に対し、大手各紙は社説で批判。時事通信は抗議文を出し、日本新聞協会は八月三日、全面公開を求める文書を提出した。
八月六日に映像が公開になると、新たな問題が浮上した。音声部分をすべて文字に起こした発言録が用意されているが、内容の精度が低いことを理由に、持ち出しもコピーも禁止。多くの記者が、映像を見ずにひたすら発言録を写し取るという珍妙な光景が現れた。東電はプライバシー保護を理由に映像の一般公開を拒否したが、個人名を伏せた文字情報であれば、公開できない理由はないはずだ。
映像データに含まれる期間にも問題がある。公開対象とされたのは三月一一~一六日午前〇時までだが、福島第一ではその後も立て続けに問題が起きた。一六日には使用済み核燃料プールが沸騰している可能性が発表され、二〇日には3号機の温度が上昇してベントが検討された。四月四日には大量の汚染水を海に放出し、その経緯が問題になった。東電によれば一六日以降も音声が記録されている部分があるというから、テレビ会議の記録は事故検証の最重要資料だ。
それでも東電は八月一六日現在、社内文書であるという見解を変えていない。あれだけの事故を起こしながら、こんな隠蔽を許していいのか。東電の設定した閲覧期限が、まもなくやってくる。
(木野龍逸・ジャーナリスト、8月24日号)