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脱原発法制定全国ネット設立で会見――「脱原発」を衆院選の争点に
2012年9月10日5:28PM
東京電力福島第一原発事故以来、脱原発に向けた最も具体的な道筋が示された。
八月二二日、衆議院第一議員会館の国際会議室で「脱原発法制定全国ネットワーク設立」の記者会見が開かれた。
会見の冒頭、この全国ネットワークの代表世話人のひとりである作家の大江健三郎氏は、大飯原発再稼働への思いをこう語った。
「原子力発電というものは、私たち人間の根本的な倫理に反するものであり、だからこそただちに全面的にやめなければならない。根本的な倫理とはすなわち、次の世代、次の世紀、次の時代に人間が生きることを妨害しないことである。ところが、いま大飯原発の再稼働を許してしまったではないかという敗北感、無力感を強く感じながら過ごしてきた」
こうした思いを持ちながらも、毎週金曜日の首相官邸前のデモをはじめ全国的な広がりと盛り上がりを見せている市民運動に、人間の根本的な倫理を見たという。
「その上で、原発を廃止する法律を作り実現しようという根本的で現実的な方策が必要となった。そのためには議員に法律を作ってもらうこと、政府への働きかけとして、われわれ市民がデモを含めたいろんな発言をしつづけることが必要である。このふたつのことをはっきり実現している、この脱原発基本法の要望に私は賛成した」
この法案の具体的な内容について、大江氏と同様、代表世話人の河合弘之弁護士が、「二〇二〇年度から二〇二五年度の間のなるべく早い時期に、日本の原発をすべて撤廃するという提案をします。このことにより、脱原発を国策として宣言し、かつ一定の年限をデッドラインに置いて、政策として具体的に一歩一歩、そしてなるべく早く踏みしめていかなければならない」と説明した。
全国ネットワークでは今国会中、遅くとも衆議院解散前には法案の提出を目指し、「脱原発」が衆院選の争点となることを狙っている。
「この法案により各議員、政党の賛否を明らかにしたうえで、総選挙を行なうことができる。そうすれば、有権者は原発推進の政党や、抽象的な脱原発依存を掲げるだけの政党、そして脱原発法に賛成する明確な脱原発派の政党とを区別することができる」(河合氏)
いまや国民の九割近くが求める脱原発には、具体的な法案の成立と、市民の中にある根本的な倫理に裏付けられた後押しが必要となる。
(頓所直人・フリーライター、8月31日号)