リュックが触れただけで痴漢犯――検察と闘う教諭
2012年9月14日5:46PM
「先生頑張れよ、信じてるぞ、と子どもたちに励ましてもらっています。無罪を勝ち取って必ず教壇に戻ります」
そう訴えるのは、東京都三鷹市の公立中学校教諭の津山正義さん(二八歳)だ。何度目かの挑戦で難関の教員採用試験に受かり、夢だった先生になったのが二〇一〇年。試用を終えて仕事が軌道に乗りかけた昨年一二月、災いに見舞われる。路線バスの中で痴漢をしたとして逮捕されたのだ。身に覚えがないと訴えたが、起訴された。生活は一変、教員の仕事は休職となり、濡れ衣を晴らすべく公判を闘う毎日となった。
東京地方裁判所立川支部での公判で明らかになったのは、三鷹署や東京地検立川支部の捜査や立件のずさんさだ。起訴状によれば、津山さんは昨年一二月二二日夜、学校に忘れ物を取りに戻ろうと小田急バスに立って乗っていたところ、前にいた女子高校生の尻のあたりを手で触ったことになっている。だが、弁護団によれば、逮捕直後、三鷹署で行なった両手の微物鑑定(粘着テープで付着物を採取・鑑定する)では、女子高校生が着けていたスカートの繊維は見つかっていない。スカートは毛一〇〇%で、触った場合は羊毛の繊維が簡単に付着する。痴漢をしたのに繊維が一本もつかないのは不自然だ。
また、「犯行」をしたとされる時刻に津山さんが携帯電話でメールを送っていたことも無実を裏付ける事実だ。片手でつり革を持ち、残った手で携帯電話を操作しているなかで、痴漢をすることはきわめて難しい。さらに車載カメラの映像に津山さんの犯行を裏付ける映像はなかった。
津山さんはリュックサックを腹側にかけていた。そのリュックが女子高校生の体に触れたのを、痴漢と誤認した可能性が高い。
弁護側は現在、スカートの繊維や車載カメラ映像に関する鑑定を行なっており、証拠申請する方針だ。冤罪という究極の「いじめ」と闘う津山教諭の姿に、子どもたちの視線は集まっている。
九月二八日に東京地裁立川支部で期日間整理手続を予定している。
(三宅勝久・ジャーナリスト、8月31日号)