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【宇都宮健児の風速計】 税金は金持ちから取れ
2012年9月18日5:33PM
『税金は金持ちから取れ』という本が「金曜日」から出版されている。
著者の武田知弘さんは、ノンキャリア職員として大蔵省(現財務省)に勤務した経験の持ち主であり、具体的資料を交えて税金についてわかりやすく解説している。
折しも、八月一〇日、消費税率を二〇一四年四月に八%、二〇一五年一〇月に一〇%に引き上げる「社会保障と税一体改革関連法」が成立してしまった。
貧困と格差が拡大し、社会保障費が膨らむ中で、安定した社会保障の財源を確保するということが、消費税増税の理由となっている。
しかしながら、貧困や格差の解消をめざすのであれば、富裕層に対する課税を強化し、社会保障を通じて富の再分配を行なうことが求められているはずである。
わが国では一九八九年に三%の消費税が導入され、九七年には消費税率が三%から五%に引き上げられている。そして、これらの直後にはいずれも法人税と所得税が引き下げられている。
武田さんの試算によると、二〇一〇年の国税収入は三七・四兆円であるが、一九八八年レベルの法人税率・所得税率に戻せば、概算でも六〇兆円以上の税収が見込まれ、これに現在の消費税収入を合わせれば、約七〇兆円の税収となるということである。
下げた法人税・所得税の税率を一九八八年レベルに戻せば、消費税を引き上げる必要などまったくないのである。
また、日本には個人金融資産が約一四〇〇兆円あり、不動産などと合わせれば、約八〇〇〇兆円の資産があると推測されている。これに一%の富裕税を課せば、概算でも約八〇兆円の税収となる。資産の少ない人(一億円以下程度)の課税を免除するとしても、少なくとも二〇兆円以上になるという。
武田さんによれば、金持ちというのは、税金に関して非常によく勉強しており、政治家に多額の献金を行なう一方で減税の働きかけをしてきているので、高額所得者や資産家は減税され続け、平均層以下の給与所得者ばかりが増税され続けてきているということである。
私が貧困問題の講演を行なうときは、最近では必ず武田さんの本を紹介するとともに、私たちも税金について勉強して、財界・政治家・官僚・マスコミなどにだまされないようにしよう、と呼びかけている。
(9月7日号)