カネミ油症被害者救済法案――加害企業に税金投入へ
2012年9月18日5:30PM
一九六八年に発覚した国内最大級の食中毒事件「カネミ油症」。食中毒の原因物質が内分泌攪乱化学物質のダイオキシン類だったため、食べた本人ばかりか子や孫の世代までが深刻な健康被害に見舞われている。その被害者たちが求めてきた公的救済が、事件の発覚から四四年が経過し、初めて実現することになった。
超党派の国会議員連盟(会長・坂口力元厚生労働大臣)で検討されてきたカネミ油症被害者救済法案が八月二四日、衆議院本会議で全会一致で可決された。二九日までに参議院でも採決され、今国会中に成立する見込みだ。
救済法案は難航を極めた。厚労省が「原因者負担の原則」(PPP)に固執し、被害者救済にかかる費用を国が直接負担するのを頑として拒絶してきたためだ。
そこで法案では、原因企業のカネミ倉庫(北九州市)に対する政府備蓄米の保管委託を拡充し、経営を国が下支えする形で、被害者の医療費を間接的に負担することになった。また、救済法案が成立すると、同法に基づきカネミ倉庫は賠償の未払い分の代わりに年五万円を被害者に支払うことになるが、これにしても原資は税金だ。
そのため、被害者の間からは、「被害者救済法ではなく、加害企業救済法にならないか?」
との不安も聞かれる。深刻な健康被害をよそに、税金投入で加害企業だけが“焼け太り”する――。万が一にもそんなことにならぬよう、カネミ倉庫の財務状況の徹底的な公開と監視が不可欠だ。
(明石昇二郎・ルポライター、8月31日号)