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「五つ星」を自称する杉並区の「官製いじめ」――不正支給の奨学金を子に請求
2012年10月5日1:03PM
署名捺印は捏造、連帯保証人は架空の人物――公文書偽造・同行使という不正行為によって、虐待癖のある母親が子どものAさんに無断で借りた杉並区の奨学金約六〇万円について、同区が偽造の被害者であるAさん(現在も未成年者)から取り立てていたことがわかった。母親は後に親権を剥奪された。Aさんは一時、児童相談所に保護されていたが、杉並区が請求する六〇万円の中には保護中に母親が受け取ったカネも含まれている。奨学金の支給は、親権剥奪によって更新手続きがなされなかったために停止された。
親権を濫用した不正と役所の手落ちによって発生した焦げ付きを、弱い立場の子どもから回収する。事件は、学校のいじめが問題化しているなかで「官製いじめ」が横行する実態を浮き彫りにした。
杉並区に六〇万円の「借金」があるとAさんが知ったのは二〇一一年暮れ。区からきた通知を調べてみると、数年前に自分の名で申し込まれていた奨学金だった。Aさんの署名・捺印は偽造、連帯保証人欄には架空の人物の名が書かれていた。Aさん名義の銀行口座も作られていたが、Aさんは学費をもらった覚えがない。すべて母親の仕業だった。一方、杉並区もAさんの本人確認をせず、連帯保証人の身元も確かめていなかった。
納得いかないAさんは「親権に基づく法廷代理権の濫用と杉並区のずさんな手続きによってなされた貸し付けだから返済義務はない」と提訴。だが東京簡裁の鈴木敏之裁判官は「杉並区は母親による法廷代理権の濫用を知り得る立場になかった。責任はない」との理屈で請求を棄却した。控訴審の東京地裁・森山由孝裁判官も同じ理由でAさんの敗訴を言い渡した。
奨学金問題に詳しい今暸美弁護士はいう。「杉並区の過失は明らかで、大人のミスを子どもに背負わせるひどい判決だ。司法と行政が虐待に加担するようなもので、法律家として恥ずかしい」。
(三宅勝久・ジャーナリスト、9月21日号)