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クウェートで米軍車両に轢かれ重傷――障がい残った元自衛官提訴へ

2012年10月12日1:42PM

池田頼将さんの口は1ミリしか開かず、麻痺と震えで字もうまく書けない。(撮影/三宅勝久)

〈イラク復興支援派遣輸送航空隊は、任務を完遂し、全員無事日本に帰国しました〉(防衛省ホームページ)

 イラク・クウェート・インド洋への派遣で自衛隊員に死傷者はいない――日本政府はそう繰り返してきたが、この説明がウソだったことが発覚した。元航空自衛隊の3曹・池田頼将さん(四〇歳)が、米軍属車両にはねられ、重傷を負っていたのだ。池田さんは近く国家賠償請求訴訟を名古屋地裁に起こす(水野幹男弁護団長)。

 事故に遭ったのは二〇〇六年七月四日、クウェート・アリアルサレム米軍基地でのことだった。米国の独立記念日だった。

「マラソン大会が開かれて出場したんです。給水所の水を取ってコースに戻った直後、後ろからドスンと衝撃を受けて気絶しました」

 後ろからきた大型バスにはねられたのだった。米軍が契約している軍事会社KBR社のものだった。

 事故後、池田さんは米軍の医務室に運ばれるが、飲み薬数錠を与えられただけ。自衛隊や現地でもまともな治療はできなかった。

 翌日から任務に就かされた。全身に激痛があり、歩けない。顎を強打して口も開かない。ソファに横になって痛みをこらえる毎日だった。食事はご飯に味噌汁をかけて歯の間から流しこんだ。

「治療のために帰国したい」と上司に言ったが「帰国便がない」とごまかされ、任期満了の〇六年八月まで帰国できなかった。小牧基地での帰国式典では、首のコルセットを取るよう指示された。

 帰国後も暴力やいじめ、パワハラを受け、泣く泣く退職した。公務災害は一部の治療費だけで打ち切り。失業者となった池田さんに、米軍側からは見舞いもない。

「二〇年間勤めた自衛隊に裏切られ、何度も死にたいと思いました。僕みたいに苦しむ隊員がこれ以上出てほしくありません」と池田さんは訴える。

(三宅勝久・ジャーナリスト、9月28日号)

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