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民主党政権下の死刑執行と人権救済法案の“二枚舌”――存廃論議棚上げし3年で9人
2012年10月19日2:54PM
滝実法務大臣と法務省刑事局(稲田伸夫局長)が二人の死刑を執行(九月二七日)したことに対し、人権団体などから抗議の声が上がっている。アムネスティ・インターナショナル日本は同日、国連人権理事会などから再三にわたり死刑廃止への努力を要請・勧告されている日本政府が「国際基準にのっとった責任を果たしているとは言い難い」と指摘、「公式に死刑の執行停止措置」の導入を要請し、日本弁護士連合会も山岸憲司会長名で抗議声明を出した。
死刑を執行されたのは江藤幸子(六五歳)、松田幸則(三九歳)両死刑確定者。松田死刑囚の場合、本人が上告を取り下げて死刑判決確定となっていたため、アムネスティはこれを「国連決議である死刑者権利保護規定(六条)が求める必要的上訴の確保の要請に応えないままの執行」と批判している。
二〇〇九年九月に民主党政権になって以後、死刑執行は四度目。千葉景子・小川敏夫・滝実の各法相の決定で計九人の死刑が執行された。千葉法相時の一〇年七月に二人が執行され、その翌月には「死刑の在り方についての勉強会」が発足したが、小川法相時の一二年三月に「結論の取りまとめを行なうことは相当ではない」とするお茶を濁すような報告書を出して終結。同月、それを待っていたかのように小川法相は一年八カ月ぶりに三人を執行。以後、死刑をめぐる議論は事実上棚上げ状態だ。
八月に二人、今回再び二人の執行を決定した滝法相は執行後の会見で、死刑制度を「常時、検討を続けていく問題だ」などと他人事のような発言をしたが、「勉強会」を終結させ、〇九年の政策集に記されていた「死刑についての幅広い議論」を封じたまま執行し続けているのは民主党政権だ。
一方、同じく法務省に関わる「人権救済法案」。九月一九日に野田佳彦政権が閣議決定したが、自民党総裁となった安倍晋三元首相や『産経新聞』などが「言論の自由の弾圧につながる」などと批判を強めている。「これでは北朝鮮による拉致問題への抗議活動も『不当な差別』とされかねない」(九月二〇日・MSN産経ニュース)などという理由だが、国家権力による合法的殺人の死刑を執行しながら「人権救済」を管轄する法務省の“二枚舌行政”への批判はない。
(片岡伸行・編集部、10月5日号)