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「20年期限」で復興住宅から追い出し――神戸市に住民が抗議
2012年10月26日6:07PM
阪神・淡路大震災の被災者が暮らす借り上げ復興公営住宅からの転居強要をめぐって、兵庫県と神戸市が大揺れに揺れている。
神戸市の論理では「契約期間は二〇年なのだから、満了で出て行ってもらう」として昨年来、対象約三八〇〇戸に対して、その説明会と“転居先斡旋”を繰り返してきたが、一部を除いて進んでいない。「期間満了」は早い住宅で三年後からだが、住民側からは「入居当時から二〇年で出て行けとは聞いていない」「入居許可書にも書いていない」「悪いようにはしない、延長すると聞いていた」といった反論や抗議が続出。借り上げ公営住宅入居者連絡協議会(安田秋成代表)を結成して、市長への手紙や署名運動、議会への陳情、市役所前宣伝などで世論に訴えてきた。
六月二〇日の参議院災害対策特別委員会やその後の“直訴”でも、当時の中川正春防災担当相から、「生活の維持には配慮が必要」「複数の選択肢を示すことが大切」「早期解決を」など、自治体の再考を促す前向き答弁を引き出している。
加えて、一〇月二日の神戸市議会決算特別委員会では、神戸市の“二枚舌”答弁を覆す「動かぬ証拠」が出現。「神戸市すまい審議会 安心な住生活部会」(二〇〇九年一二月二一日)の議事録が情報公開され、「(二〇年後に)出てくれとは言っていない」「期間延長その他の手法を検討」など、住民側主張の正当性を裏付ける当局者の言明が、随所に記述されていた。この日の委員会で当局は「意思形成過程の議論」とスリ替え答弁したが、「神戸市の嘘つき答弁を許すな」「神戸市には致命的な新資料」と、住民側の怒りはすさまじい。
同審議会では、市営住宅の七〇〇〇戸縮減を目指す「第二次マネジメント計画」を審議しており、「二〇年期限」を持ち出すことで被災入居者を追い出し、乗り切ろうという、冷酷な弱者切り捨て行政の姿勢が鮮明になっている。一方の兵庫県は、非公開の検討協議会でも論議中だが、転居の基本方針は神戸市と変わらず、同じく住民側の抗議にさらされている。
(たどころあきはる・ジャーナリスト、10月12日号)