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橋下市長の「脱原発」はかけ声だけだった――ブレーンが小沢氏に急接近
2012年11月7日5:38PM
“脱原発”を掲げている橋下徹大阪市長のブレーンで「脱原発弁護団全国連絡会」代表の河合弘之弁護士が、「国民の生活が第一」の小沢一郎代表に急接近している。一〇月一六日から二一日までの“脱原発ドイツ視察”に同行。小沢代表も「河合弁護士から脱原発派の市民団体の意見を聞きたい」として二人三脚を組み始めたのだ。
脱原発連立政権の誕生を目指す両者の戦略はぴったり一致している。小沢代表が脱原発などを旗印にした「オリーブの木」構想を打ち出しているのに対し、河合弁護士も二〇二五年三月末の原発ゼロを盛り込んだ「脱原発基本法」への賛否を次期総選挙での投票基準にするべきだと訴えているからだ。
M&A(企業の合併や買収)訴訟の草分け的存在として活躍する辣腕ビジネス弁護士でもある河合弁護士は、大飯原発の再稼働反対など脱原発をリードしてきた「大阪府市エネルギー戦略会議」のメンバー。元改革派経済産業官僚の古賀茂明氏や環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長らとともに、関西電力株主総会での提案や再稼働なしでの今夏の電力需給計画作りなどに取り組み、再稼働ありきの野田佳彦政権の打倒を訴えた橋下市長を理論面で支えてきた。
しかし、府市エネルギー戦略会議は訴訟リスクを理由に休止に追い込まれ、橋下市長の脱原発への意欲も明らかに低下した。「大飯原発再稼働なしでも今夏の電力需要はしのげた」というのが河合弁護士や飯田氏、古賀氏らブレーンの一致した結論だが、橋下市長は「節電が定着したのか分からない」(一一日の大阪市役所での会見)として、来年以降に原発再稼働が必要となる可能性を指摘している。「何でいまさら、そんなことを言っているのか」「官僚の“注射”(説明)が効いているのか」と飯田氏が首を傾げたのはこのためだ。
それに比べ小沢代表は「今夏は歴史的猛暑だったが、原発再稼働なしで電気は足りた」と一五日の会見で言い切っている。また青森県の「大間原発」建設に対し、対岸の工藤寿樹・函館市長が差し止め訴訟を準備しているが、橋下市長は「行政は与えられた権限と政治の力を使うべきだ。訴訟は本筋でない」(一一日の会見)と否定的だ。自らのブレーンである河合弁護士が大間原発の差し止め訴訟を担当しているのに、である。
ちなみに橋下市長が容認したのは夏季限定の大飯原発再稼働である。電力需要のピークをすぎた秋になっても大飯原発は止まらないのだから、原発事故が起きた場合に“被害地元”となる大阪市が、同じ地理的状況にある函館市と足並みを揃えて差し止め請求をすれば、「原発の建設や稼働を立地県の同意だけで進めていいのか。被害地元の同意も必要とするべきだ」という問題提起となったはずだ。
いまや経産官僚に“洗脳”されたかのような橋下市長と、自らが抜擢した脱原発派のブレーンとのギャップは開くばかりだ。これでは、かつての再稼働反対の姿勢を評価した脱原発派や無党派が離反、日本維新の会の支持低下に拍車をかけるのは確実だろう。
「国民の生活が第一は『三つの緊急課題』の一番目に『原発ゼロへ』と銘打って、一〇年後を目途に全ての原発を廃止すると明記している。その手段として、省エネ技術と再生可能エネルギーの普及、効率の良い天然ガスコンバインドサイクル火力発電やエネルギーの推進も掲げています」(「国民の生活」のはたともこ参議院議員)
今後、脱原発に本気な小沢氏の周りに河合弁護士のような脱原発のエキスパートが結集、意欲低下の橋下市長と入れ替わるように、脱原発実現の牽引車役として注目を集める可能性が高いだろう。
(横田一・フリージャーナリスト、10月26日号)
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