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安倍自民党総裁が現地入りでも鹿児島補選で圧勝ならず――原発問題語らぬ小泉進次郎氏
2012年11月15日5:41PM
自民党にとって安倍晋三総裁誕生後初の国政選挙となった衆議院鹿児島三区補欠選挙は一〇月二八日に投開票され、自民党公認で公明党推薦の宮路和明元衆議院議員(七一歳)が、国民新党県代表で民主党推薦の野間健氏(五四歳)を五六六九票の僅差で敗り、七回目の当選を果たした。しかし選挙戦序盤に宮路陣営から出ていた「圧勝して政権奪還に弾みをつける」との目論見は外れ、安倍自民党の不人気ぶりや勢いのなさを印象づける結果となった。
二八日二〇時すぎ、宮路事務所は重苦しい雰囲気に包まれていた。すぐに当確が出る雰囲気は全くなく、選対幹部は沈鬱な表情をしながら、こうつぶやいた。「負けることはないだろうが、一万票も差がつかない接戦で、ミニマムで(最少で)五六〇〇票差とみている。安倍総裁が現地に入ってこの票差では、選挙の顔としての疑問符がついてしまう」。
二時間後、当確がようやく出て万歳三唱となったが、票差は五六六九票と“最悪のケース”とほぼ一致。「年内か年明けの次期衆院選も宮路氏でいくのか」「候補者差し替えはあるのか」という勝利した選挙事務所に似つかわしくない質問が記者から出た。
同夜の記者会見で安倍総裁は「民主党政権に国民がノーという意思を示した」としたが、指揮官としての冷静な分析能力に欠けることを告白したに等しい。自民党を前面に出して総力戦で闘ったのに、内閣支持率の低迷にあえぎ、政党支持率でも自民党の半分以下の民主党推薦の新人候補と大接戦になった――この現実を受け入れない“幼児性”を露呈したといえる。
選挙の顔として疑問符がついたのは安倍総裁だけではない。ラストサンデーの一〇月二一日には、「わが自民党が誇る最大のスター」(宮路氏)という小泉進次郎衆院議員(青年局長)が駆け付け、薩摩川内市やいちき串木野市など四カ所で街頭演説をした。演説後は押しかける支持者に握手をして回り、聴衆が殺到して転倒する人が出るほどの人気ぶりだったが、あまりに内容の乏しい演説に「政治家というよりタレント」「若者が出て行って、高齢者ばかりになっている地域の課題をまったく理解していない」(農協関係者)と冷ややかな声も出た。
実際、街頭演説は中身が空っぽで支離滅裂な内容だった。小泉氏は「宮路さんは私の父親ぐらいの世代です」と紹介しながら、「宮路先生をはじめとする、今までだったら定年で退職して当たり前の方々にも元気で健康で働き続けてもらわないといけない」「老人が若者を支えてやるぐらいの元気を持ってもらわないといけない」と持ち上げた。
小泉氏は日本の人口減・高齢者激増社会の深刻さをどこまで理解しているのだろうか。高齢者が長く働けば、若者の雇用の場が少なくなる弊害が生じる。高齢者の激増で年金や医療や福祉予算が増加、年金制度も破綻寸前で、世代間格差も広がっている。年金受給額の削減など高齢者の痛みを伴う改革が不可欠という声もあるくらいなのに、「若手議員のホープ」の小泉氏は、お年寄りに耳当たりのいいことしか言えない。投票率の高い高齢者にこびを売って政権復帰を狙う“自民老人党”の「客寄せパンダ」と呼ぶのがぴったりだろう。
しかも、若い世代の関心が高い原発政策については一言も触れなかった。九州電力の川内原発(薩摩川内市)がある鹿児島三区は、再稼働問題を抱えている。原発事故が起きれば、地域で盛んな農業や漁業に重大な影響を与えるのに、である。小泉氏が代わりに触れた地元ネタは、名産のポンカンを使った「ポンカレー」と串木野港からマグロ船が出港するのにちなんだ「マグロラーメン」。グルメリポーターのような語りで地元の機嫌を伺うばかりであったのだ。
原発問題や地域振興の具体策も語らず、既得権や利権にメスを入れる姿勢も皆無では、自民党に追い風が吹かなかったのは当然だ。自民・公明の勝利というより、野田民主党のあまりの不人気に助けられたというのが実態だろう。
(横田一・フリージャーナリスト、11月2日号)
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