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歴史教科書の“盗用”めぐり――自由社と育鵬社対立

2012年11月19日5:50PM

「新しい歴史教科書をつくる会」(つくる会)の自由社が、元々同じ流れを汲む育鵬社版歴史教科書に「多数の盗用がある」として、育鵬社(扶桑社の子会社)に対し、公式の謝罪と、自由社が被った被害の補償を求めた。補償額は目安として、育鵬社の市販本を含む総売上から製造原価を除いた額の五〇%としている。

 自由社版教科書の執筆者代表である藤岡信勝拓殖大学客員教授らは一〇月一九日、文部科学省に対して、育鵬社版歴史教科書には水田稲作に関する記述など盗用箇所が四七カ所あると報告。二三日には東京都内で会見を開き、「これだけの盗用は教科書史上で初。すみやかな対処を望む」と訴えた。

 つくる会は「教科書改善運動」として一九九六年に発足し、二〇〇二年に扶桑社から「新しい歴史教科書」を発行したが、編集方針の違いなどから内部分裂。その後、自由社から教科書を出版した藤岡氏らは、同会の分裂前に執筆した扶桑社版教科書の出版差し止めを求めて東京地裁に提訴したが、地裁はこの請求を棄却。判決文で藤岡氏は「(扶桑社版教科書の)執筆者の一人」とされている。

 扶桑社版教科書の記述を「盗用している」とされた育鵬社は本誌の取材に対し「藤岡氏は(扶桑社版教科書の)執筆者の一人であり、事業継続している当社の教科書の内容が似通ってくることはありうること。藤岡氏らの主張は理解に苦しむ」としている。一方、二三日の会見で、自由社の執筆者グループは「保守系言論人にはヒラメ人間がいる」と、育鵬社を痛烈に批判した。

 昨年、沖縄県八重山地区を揺るがした教科書採択問題。住民から自由社、育鵬社教科書への批判の声が高まると、藤岡氏は地元紙に「特定教科書の誹謗はやめよ」と、両社教科書を援護してみせている。

 自由社と育鵬社の対立は法的な闘争に発展する見通しだが、“ヒラメ人間”同士の闘いになってはいないか。

(野中大樹・編集部、11月2日号)

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