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七つ森書館の訴えを棄却――『読売』主張を鵜呑み
2012年11月20日5:10PM
知的財産高等裁判所第二部(塩月秀平裁判長)は一〇月一五日、『会長はなぜ自殺したか――金融腐敗=呪縛の検証』(刊行:七つ森書館、著者:読売社会部清武班)の出版差し止め決定に異議を申し立てていた七つ森書館の抗告を棄却した。同書の著作権を主張していた読売新聞社側を全面的に支持した形となった。棄却理由として、知財高裁は「(著作権は)個々の執筆者の総称ではなく、法人名を表示したものと認めるのが自然」とした。
本誌五月一八日号本欄でも報じたが、同書は元巨人球団代表の清武英利氏ら取材班が『読売新聞』社会部時代にまとめた著書(一九九八年に新潮社から刊行)の復刊。二〇一一年一一月、清武氏が読売新聞社代表取締役会長・渡邉恒雄氏を告発したことを機に、読売新聞社は七つ森書館と締結した同書の出版契約書の無効確認請求をはじめ、この間二件の仮処分を申し立てている。
今年五月、書店へ本を卸している各取次会社への納品も完了していた段階で、読売新聞社は同書の販売差し止め仮処分を申し立てた。同時に、各書店や各取次会社に対し、「七つ森書館に対する販売禁止の仮処分申し立てについて」という文書を配布し、同書の販売をしないよう要請した。
六月には読売新聞社が申し立てた著作権仮処分が、東京地裁民事四〇部(東海林保裁判長)で認められ、七月に出版差し止めの決定がなされた。七つ森書館は同書を出庫することができなくなってしまったため、知財高裁へ保全抗告を申し立てていた。
読売新聞社が名誉権にもとづいて申し立てた、もう一件の出版差し止め仮処分では、七つ森書館の勝訴が確定している。
今回の棄却決定に対し、同社の代表取締役社長・中里英章氏は「『読売新聞』側の主張を『鵜呑み』にした東京地裁の決定をなぞっただけという恐るべき不当なもの」として、一〇月一八日に最高裁判所へ特別抗告した。
なお、一一月一三日、「日本の裁判所はナベツネに逆らえないのか」と題し、東京・韓国YMCAにて清武氏、人材育成コンサルタントの辛淑玉氏、佐高信本誌編集委員らのシンポジウムが実施される。詳しくは七つ森書館まで。電話番号 03-3818-9311。
(赤岩友香・編集部、11月2日号)