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裁判所が「思想・良心の自由に影響を与える」と判断――「君が代」裁判で初の国家賠償

2012年12月10日5:54PM

司法記者クラブで喜びの会見をする河原井純子さん(右)。(撮影/永野厚男)


 二〇〇六年一月の東京都立特別支援学校三〇周年行事の「君が代」斉唱時、累計四回の不起立を理由に、都教育委員会から停職一カ月の処分を受けた河原井純子元教諭(一〇年三月定年退職)が三〇〇万円の慰謝料を求めた訴訟で、東京高裁(南敏文裁判長)は一一月七日、都側に三〇万円の賠償を命じた。

 都教委は君が代を強制する〇三年の「一〇・二三」通達発出後、卒業式などで不起立などの教職員を「一回目戒告、二・三回目減給、四回目以降は停職」と、累積加重処分をしてきた。最高裁は今年一月、減給以上の処分は「原則違法」と判じ取消しを命じた。一方、国家賠償法に基づく慰謝料については別件訴訟で高裁が「減給と、停職期間が実質休業中だった処分者」には認めていないが、停職期間が一部授業日と重なる河原井さんについては、高裁に差し戻していた。

 判決はまず、国旗国歌法審議時(一九九九年)の政府答弁を引用し、「不起立への処分は、憲法上の思想・良心の自由に影響を与える」とし、「都教委が体罰事案では機械的、一律的に処分を加重していない事実」も踏まえ、「不起立の理由等を処分の選択時、考慮に入れることは要請されていたというべき。不起立で機械的、一律的に加重処分を行うべきでない」などと判じ、都教委の「過失」を認定した。

 判決は、河原井さんの教育活動(児童生徒との触れ合いの重視)を認めた上、(1)養護学校は教諭と児童生徒との人格的触れ合いが教育活動に欠かせない(2)「停職中教壇に立てない職務上の不利益による精神的苦痛」の大きさ――などの理由で、不起立での懲戒処分に対し、初の国家賠償を認めた。

 会見で、河原井さんは「『男らしく女らしく』でなく『自分らしく』生き、おかしいことにはノーと言おうと教えてきた。通達には服従できない」と発言。比留間英人・都教育長は「判決は遺憾。対応を検討する」とのコメントを出した。

(永野厚男・教育ライター、11月16日号)

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