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民主は惨敗、脱原発勢力の“未来”は……――安倍タカ派政権、26日に誕生
2013年1月15日5:19PM
「自民党への信任ではなく、民主党の間違った政治主導による混乱」――。自民党の大勝について安倍晋三自民党総裁は投開票翌日の一二月一七日、党本部で開かれた会見でそう述べた。
「3・11」後初めての総選挙は、各種世論調査で過半数を超える「脱原発」や「消費増税反対」の民意と乖離した結果となった。
自民党は単独過半数(二四一議席)を大きく上回る二九四議席を獲得し、民主党は五七議席と惨敗。以下、第三党に躍り出た日本維新の会五四、公明党三一、みんなの党一八、日本未来の党九、日本共産党八、社民党二、国民新党一、新党大地一、無所属五。一八日に連立協議に合意した自・公の二党で、参院で否決されても再可決できる三分の二(三二〇議席)以上の三二五議席を確保。すでに海外諸国から「右傾化懸念」の声が出ている安倍タカ派政権の誕生も間近だ。大勝、惨敗、伸び悩み……投開票時の各党の表情を追った。
【安倍自民、改憲に意欲】
一六日夜、自民党本部の速報会場。次々と読み上げられる当選者名に、石破茂幹事長が嬉々として花をつけていく。しかし、安倍総裁は各社のインタビューに終始、険しい表情で応じた。二〇〇五年の郵政選挙、〇九年の政権交代選挙と重なる大勝ぶりに、「気を抜くと同じことを繰り返す」と自らを引き締めるかのように。翌一七日、党本部の一階ホールには「参議院任期満了まで223日」という壁紙が貼られていた。
同日の会見で安倍氏は「民主党政権で日米同盟の絆が損なわれた」とし、来年一月下旬から二月上旬の訪米を表明。第一次安倍内閣(〇六~〇七年)の最初の訪問先は中国だったが、「尖閣諸島が日本の領土であることに交渉の余地はない」と、対中国を見据えた外交方針を示した恰好だ。
そして改憲。「最初に行なうことは九六条の改正」と話し、現行で衆参両院の三分の二以上となっている改憲発議を「過半数にする」と、改憲地ならしに意欲を示した。
二六日に召集される特別国会で安倍氏は新首相に指名される。
【民主、22日新代表選出】
民主党の選挙開票センターが設置されたザ・プリンスパークタワー東京地下二階のコンベンションホール。一六日夜、鉢呂吉雄国会対策委員長(北海道四区)がテレビ中継取材に応じる予定になっていたが、鉢呂氏は自民新人の元道議に二万五〇〇〇票以上も差をつけられ落選。北海道一区でも当選一〇回の横路孝弘衆院議長(比例復活)が敗れるなどかつての民主王国は自民色に塗り替えられた。また鉢呂氏をはじめ現役閣僚八人が落選する大嵐となった。
細野豪志政策調査会長、岡田克也副総理、安住淳幹事長代行、輿石東幹事長らがいずれも厳しい表情で敗戦の弁を語った。二三時三〇分にようやく登壇した代表の野田佳彦総理は、責任をとって代表を辞任することを明言。二二日に新代表が選出されることになった。民主党が返り咲く道は険しい。
【維新、早くも齟齬】
橋下徹代表代行は一六日二三時から中之島にそびえる高級ホテルの大ホールで会見。大阪では躍進したが、全国的にはいま一つ。「過半数を取ると言ったのに取れなかったのは僕の責任」と険しい表情を見せた。心境などを聞いたワイドショーのレポーターを「どういう意味があるんですか」などと罵倒。新内閣の首班指名について自民党の安倍総裁を推すことに前向き発言をし、「他党の党首を推すなど論外」と話す石原慎太郎代表との齟齬も露呈していた。その石原代表も同日午後八時二五分すぎ、東京・赤坂のホテルに設けられた「日本維新の会開票センター」に姿を現したが、終始憮然とした態度。テレビの速報にまばらな拍手が支持者から起きるほかは冷ややかな空気が流れていた。
【未来、参院選で反転を】
脱原発派の受け皿になろうとした未来の党は、議席数を現有六一から九へと大幅に減らした。グランドアーク半蔵門の会見場で記者から敗因を問われた嘉田由紀子代表(滋賀県知事)は「争点隠しがあった」と世間の関心が原発問題に向かなかったことを挙げた。
民意を切り捨ててしまう「小選挙区制度」などを敗因の一つに挙げた飯田哲也代表代行は山口一区で自民党前職の高村正彦氏に約一〇万票差で敗れ、中国ブロックでの比例復活もかなわなかった。新党の代表代行となったが、立候補表明は公示前日。原発維持の自民党を批判する一方、「維新の会は石原(慎太郎)さんとの合併で改革の一丁目一番地の原発政策が後退した」と訴えたが、届かなかった。来年夏の参院選に向け、脱原発派の反転攻勢の体制作りが急務だ。
【沖縄、自民大勝】
沖縄選挙区は二区で照屋寛徳氏(社民)が四選を果たしたものの、三つの小選挙区で自民党候補者が当選。負けた選挙区の自民党候補者も復活が当選した。同党候補者が県内すべての選挙区で当選したのは初めて。民主党候補者は落選し、自公政権の復活を色濃く印象づけた。日本維新の会は四つの小選挙区で立候補者を擁立したが、風は吹かなかった。
「普天間飛行場の県外移設」など党本部と異なる公約を掲げて当選した自民党候補者。党本部とのねじれ構図は民主党政権時と変わらない。一区では前回当選後に「県内移設やむなし」を打ち出した大臣経験者が、選挙中に県外移設へ公約を変更したものの落選。県外移設への民意は固く、今回当選した自民党候補者がこのねじれにどう対処していくかが鍵となる。
【山本太郎氏、大健闘】
原発推進の「石原ファミリー」の自民党前幹事長・石原伸晃氏に挑んだ俳優の山本太郎氏。しかし、山本氏が東京八区(杉並区)への出馬を表明したのは公示前日。結果は、石原氏が約一三万票、山本氏は約七万票。石原氏の地盤であることを考えれば、知名度だけで闘った山本氏は大健闘だった。
一六日二〇時の開票後すぐにテレビ各局が選挙速報で石原氏の勝利を伝えると、会場につめかけた支援者らに「あと一週間あれば勝てていた」と一礼した。自民党圧勝を伝えるテレビ画面を見つめながら、「みなさ~ん、国防軍ですよ~」と会場の笑いを取りながらも、自民党政権への危機感を示した。次の選挙に出馬するかどうかが注目される。
(取材・まとめ/本誌編集部、取材協力/粟野仁雄・ジャーナリスト、横田一・ジャーナリスト、黒島美奈子・『沖縄タイムス』、12月21日号)
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