年越し電話相談会に千三百件超――生活の苦しさ反映
2013年1月29日5:15PM
「明るい正月を!年越し電話相談会」が昨年末、実施された。貧困問題に取り組む全国の法律家などが対応し、相談は二日間で一三〇〇件を超え、生活の苦しさや不安を訴える声が相次いだ。
「非正規雇用で働いてきたが仕事がない。高齢の親に頼ってどうにか生活しているが後ろめたい。何とかしたいが仕事が見つからない」(四〇代男性)。このように稼働年齢層では、非正規雇用など仕事が不安定・低賃金で、次の仕事も見つからない中で追い詰められているという相談が目立つ。「夫婦二人で月六万円の年金で借家住まい。医者にも行きたいが苦しい」(七〇代女性)など、わずかな年金収入で生活が立ちゆかなくなっているという高齢者からの相談も多い。最も多かった生活保護に関する相談では、自民・公明党政権が打ち出している生活保護基準一〇%引き下げなどの抑制策について不安を訴える声が多数寄せられた。
二〇〇八年リーマンショック後、派遣切りの嵐が吹き荒れた四年前の相談会と比較すると、仕事と食と住を同時に失う人が一気に溢れるという激烈な形では現れていないが、ぎりぎりまで追い詰められた層がじわじわと広がっている。統計でも、貧困率は一六%、貯蓄ゼロ世帯も二九%、生活の苦しさを訴える世帯も六割を超え、いずれも過去最悪の状況にある。
自公政権下、労働分野で非正規雇用への置き換えが進められ、社会保障が毎年切り縮められる中で、貧困と格差が拡大。その反省もないまま、政権は再び自民・公明党に戻り、生活保護が果たしてきた役割への積極的な評価もないまま、削減ありきで、生活保護がターゲットにされている。必要なことは、社会保障の穴を塞ぎ、特に「生存の最後の砦」である生活保護制度で人の命を支えつつ、非正規雇用の拡大など貧困と格差を拡大させてきた要因を除くことであり、これを同時に行なわなければならない。
人間の尊厳の基盤である生存権の価値を、政治がどう実現するかが、今、問われている。
(猪股正・弁護士、1月11日号)