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2月の安倍首相訪米の“お土産”化への阻止激化――TPP交渉参加で参院選惨敗か
2013年2月6日4:42PM
安倍晋三首相がオバマ大統領との首脳会談でTPP(環太平洋戦略経済連携協定)参加表明をすることを阻止しようと、自民党内の反対派の動きが活発化している。安倍首相が一月訪米を目指していた昨年の一二月二三日には、自民党反対派議員から成る「TPP参加の即時撤回を求める会」(会長は森山裕衆院議員=鹿児島五区)が反対集会を開催。「TPPは日本にとってメリットはない」などの反対論が噴出した。同会のメンバーは一九二人で、自民党衆参国会議員三七七人の半分以上が反対派になったことになる。その後も入会届が届いており、会員数は増加している。
訪米が二月にずれ込むことが明らかになった今年一月一七日、自民党の有力支持団体の一つである「全国土地改良事業団体連合会」などが開催した「農業農村整備の集い」でも、自民党国会議員約九〇人が駆けつけ、TPP参加に反対する決議を採択した。
なお訪米が延期されたのは、オバマ大統領の閣僚人事が決まらず、歳出削減に関する米政権の協議も続いていたためとされる。
安倍首相は、総裁選を闘い、地元・山口でも対立関係にある林芳正参院議員を農水大臣に抜擢。「JA(農業協同組合)などの反対団体から批判を受ける“叩かれ役”にしてTPP参加表明に突き進み、推進派の財界の要望に応える」という狙いが透けて見える閣僚人事だった。
しかし、反対派の動きが想定以上であったためか、安倍政権は方針転換を余儀なくされた模様だ。安倍首相は一三日のテレビ番組で「まだ状況の分析が十分ではない。まず精査、分析して判断したい」という考えを明らかにした。訪米でのTPP交渉参加表明を見送り、事前協議の加速化などの意向を示す程度にとどめる見直しで、政府高官も「TPPは訪米の条件になっていない」と言い始めた。
方針転換の背景には、衆院選でTPP反対を条件にJAグループの支援を受けて当選した議員が多数いることと、半年後の参院選への影響を懸念していることがある。
石破茂幹事長はTPPへの交渉参加について「参院選前に党の方針を決める」という考えを示したが、それでも「参院選前に参加表明を決定すると、惨敗する可能性は十分にある」との見方は根強い。
「参院選の帰趨を決定するのは、人口が少ない地域の一人区です。前回の総選挙ではTPP反対を条件に自民党候補を支援したJAグループなどが対立候補を推すことになれば、オセロゲームのように地方で惨敗する恐れがあります」(永田町ウォッチャー)
冒頭の「即時撤回を求める会」の森山会長は鹿児島県選出で、県内にはサトウキビが主要産業になっている奄美群島がある。昨年、TPPの調査で訪米した際、複数の米国の要人に対し、以下のように訴えた。
「頻繁に台風の直撃を受ける鹿児島県の奄美地方や沖縄で唯一栽培できるのがサトウキビ。TPPに加盟した場合、外国からの安価なサトウキビや砂糖の輸入増加によって、サトウキビ産業が壊滅的打撃を受ける」
こうした事態が「領土問題の最前線に位置する離島の防衛上も大問題」と指摘しているのは、領土問題の専門家で東京都の尖閣調査にも参加した東海大学の山田吉彦教授だ。TPPでサトウキビや畜産などの離島の主要産業が大打撃を受けて南西諸島の人口が減ると、他国の実効支配を招くリスクが高まるというわけだ。
安倍首相がTPP参加表明をすれば、「威勢よく中国批判をするが、本当は領土問題のことをよく分かっていない」と与野党から批判され、“売り”であるタカ派のイメージに傷がつくことも考えられる。
また昨年一一月には、米国投資会社がTPPに盛り込まれる悪名高きISD(投資家対国家間の紛争解決)条項で韓国政府を訴えた。韓国現地調査をした民主党のTPP慎重派らが指摘していたTPP参加の弊害が目に見える形になったのだ。“国益”に反するのは明らかである。
(横田一・フリージャーナリスト、1月25日号)
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