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補償格差をつける住友ゴム――アスベストで新訴訟

2013年2月18日5:09PM

 潜伏期の長い晩発性が特徴とされるアスベスト(石綿)健康被害の発症激増が懸念される中、新たな訴訟が提起された。自動車タイヤの製造工程で、かつて発がん性のある石綿を使用してきた住友ゴム工業(ダンロップ、神戸市)を相手どり、退職後に中皮腫や肺がんを発症、死亡した元工場労働者五人の遺族一〇人が一月二二日、神戸地裁に総額約九〇〇〇万円の損害賠償を求める訴訟を起こした。

 微細な繊維状の石綿を吸い込み、治療が極めて困難な中皮腫や肺ガンを発症し、一年で死に至ることが多いアスベスト健康被害は、放射線と同様、「静かな時限爆弾」とも言われ、潜伏期間は十数年から五〇年の長期にわたる。発症・死亡が退職後となることも稀ではなく、「退職労働者の団交要求に応じる義務はない」とする会社側との間で、しばしば団交権をめぐる労使紛争の原因ともなっていた。

 住友ゴムでも、二〇〇六年の団交申し入れ後に、年齢格差の大きい補償制度を新設する一方、交渉は事実上、拒否してきた。元従業員・遺族が個人加盟する労組分会は、労働委員会や裁判に訴え、一一年一一月、最高裁で「団交応諾義務がある」という勝利判決を確定させた。この判決を背景に臨んだ団交でも、会社側は責任を認めず、「死亡時六〇歳以下三〇〇〇万円から七〇歳超一〇〇〇万円まで、五歳刻みで設けた補償金額の格差解消の要求にも応えない」として今回の提訴に至った。

 被害者・遺族の相談に乗り、支援してきたNPO法人「ひょうご労働安全衛生センター」では、「交通事故と同様、逸失利益の視点で設けた補償制度だろうが、明確な説明はない。ゴム製造は兵庫の地場産業であり、埋もれた被害者は多い」として、企業責任の追及とともに、被害者の掘り起こし・相談活動を強める。

 同センターと立命館大学アスベスト研究プロジェクトとの共催による一月一二日のシンポジウムでも、「肺の奥に刺さったアスベストが牙をむき始めている」との認識から「東日本大震災の被災地の姿と重なる」と報告されている。

(たどころあきはる・ジャーナリスト、2月1日号)

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