世界の流れに逆行する地裁判決――受刑者に選挙権認めず
2013年3月6日5:51PM
公職選挙法が受刑者に選挙権を認めていないのは憲法違反だとして、違憲確認と慰謝料一〇〇万円を求めた訴訟の判決が二月六日、大阪地裁であった。
訴えていたのは元受刑者の稲垣浩さん(六八歳)。山田明裁判長は「一定の刑罰を受けた者に対し、法秩序に対する違反が著しいことを理由に、受刑中の社会参加が一定の範囲で禁止、制限されることはやむを得ない」として、違憲確認請求を却下し慰謝料請求を棄却した。
稲垣さんは釜ヶ崎地域合同労働組合(本部・大阪市西成区)委員長として長年、日雇労働者や野宿者の支援活動に取り組んできた。二〇〇八年六月には府警・西成署で暴行を受けたと訴える男性の相談を受け“怒れる労働者たち”とともに抗議活動を繰り広げた。
その際、市道に車を止めて街宣活動をしたとして道路交通法違反容疑で逮捕され(本誌〇八年七月四日号既報)、懲役二カ月の判決が確定。これに伴い確定していた別の刑の執行猶予が取り消された。野宿労働者のテントを大阪市職員らが撤去しないようビデオ監視して「威力業務妨害」罪に問われたもの(本誌〇七年九月二八日号既報)。結局、一〇年三月~一一月、滋賀刑務所で服役。同年の参議院議員選挙では投票できなかった。
弁護団は、受刑者の選挙権を一律に否定する規定を違法・無効とする判断が相次ぐ世界潮流を指摘。「受刑者への選挙権制限は国連の自由権規約二五条違反でもある」と主張したが、山田裁判長は「欠格条項を定めることは合理的な範囲内にとどまる限り、憲法上許される」と国会の裁量を広く認めた。
稲垣さんは「判決は、選挙情報の入手が困難な点も理由にするが、私自身、テレビや新聞で情報を得ていた。未決勾留者には選挙権が認められており、辻褄が合わない。選挙違反を犯したわけでもない」と即日控訴の意思を表明した。
(佐藤万作子・ジャーナリスト、2月15日号)