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国会事故調に虚偽説明、すでに3兆円超の税金投入決定――情報隠蔽の東電は国有化を

2013年3月7日4:57PM

 東京電力が国会事故調査委員会(解散)に対し虚偽の説明をしていた問題で、二月一二日に衆議院予算委員会に参考人招致された廣瀬直己社長は組織的関与を否定した上で、「とうぜん社長が関与すべき問題だと思う」と発言。当時の勝俣恒久会長や西澤俊夫社長まで決裁が上がっていたのかどうか調査すると答弁した。

 しかし東電の調査は、遅々として進んでいない。七日の東電の会見で尾野昌之原子力・立地本部長代理は、上層部の関与について「調査中である」として明らかにしない。第三者による検証委員会を設置したが、結論をいつ出すのかは明確にしていない。

 虚偽説明問題は七日付の『朝日新聞』が朝刊一面で、「東電、国会事故調に虚偽」の見出しを掲げ、東電が国会事故調査委員会に対し虚偽説明をしたと報じたことが発端。福島第一原発1号機に設置されている非常用復水器の現地調査を要望した国会事故調の田中三彦元委員に対し、連絡調整を担当していた東電の玉井俊光企画部部長(当時)が、原子炉建屋の内部は「真っ暗」と説明。田中氏はそれを理由に内部調査を断念したが、実際は真っ暗ではなかったというのだ。

 同日、田中氏は記者会見を開き、東電は「国会を愚弄した」と批判。田中氏によれば、東電の玉井氏は、一一年一〇月に撮影したビデオを見せながら現場の状況を説明した。ビデオでは原子炉建屋の中にも光が当たっている場所があったが、玉井氏は「今は(1号機には)カバーがかかっているので真っ暗。暗いのでパニックを起こすかもしれない。足を踏みはずして二一メートル下まで落っこちる可能性がある」などと述べ、「どうしても行くなら建屋入り口までは案内するので、勝手に入ってやってほしい」と言ったという。

 ところが実際は、ビデオはカバーが設置された後に撮影されたものだった。このため田中氏は、虚偽説明の事実確認と、現場の再調査を国会に要請した。これに対して東電は、即座にホームページに反論を掲載。説明の誤りは認めたが「何らかの意図をもって虚偽の報告をしたことはない」とした。

 翌八日の東電会見では虚偽説明に関する質問が相次いだ。東電の尾野本部長代理は、玉井氏の誤認が原因だったとし、組織的関与を否定。ホームページに「意図はなかった」と記載した根拠は玉井氏からの聞き取りだと説明した。しかし、玉井氏だけの責任だったとすると、事故調の窓口をしていた担当者が現場や上司に確認もせず、対応していたことになる。そんなことがありえるのだろうか。

 かりに玉井氏個人の責任だった場合は、国会事故調の報告書の信憑性に疑義が生じることになる。玉井氏は事故調との調整だけでなく、事故後の経緯や技術的な問題についても説明していたからだ。

 さらに会見では、下河邉和彦会長や廣瀬社長らの会見出席を求め、現経営陣の認識を問う声も上がったが、尾野氏は「ご意見として承る」と述べるに留まった。

 そんな中、一五日に東電は、一二年一一月に非常用復水器の現場調査をしていたことがわかったとして映像を公開した。これまで、一一月に現地調査をしたという説明はなかった。

 非常用復水器は、交流電源がなくなっても蒸気の力で原子炉に水を送って冷却を続ける装置。国会事故調の報告書は、地震によって非常用復水器の配管に損傷ができた可能性を指摘していた。もし地震による配管破断などがあったとすると、耐震基準の見直しにつながり、再稼働に大きな影響を及ぼすことになる。東電は、自社の事故調査報告書で地震による影響を否定している。

 いったい福島第一原発では、今、何が行なわれているのか。情報はいまだに東電が独占し、東電が取捨選択して、都合のいいものだけを公表することが続いている。すでに三兆円を超える税金の投入が決まっているにもかかわらずだ。

 このまま東電が存続すれば、東電の言いなりに税金を注ぎ込むことになりかねず、私たちが東電に隷属することを意味する。今すぐ東電に情報公開を義務づける法律を制定するか、東電を完全に国有化する必要があるのではないか。

(木野龍逸・ジャーナリスト、2月22日号)

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