橋下大阪市長の処分撤回求め裁判スタート――「入れ墨調査」の是非問う
2013年3月8日5:45PM
橋下徹大阪市長の有無を言わせぬやり方に従わなかった市の職員が闘いの場を法廷に移している。その中の一人が第一回口頭弁論に臨んだ。二月一八日、冷たい雨の降る大阪地方裁判所。暖房が入っているとはいえ真冬の法廷に一人の女性が、白い半そでシャツのユニフォーム姿で立った。十三市民病院の看護師、森厚子さんだ。落ち着いた声が響く。
「今日は、いつも着ているユニフォームで意見を述べさせていただきます」
森さんは、昨年実施された橋下市長による「入れ墨に関する調査票」への記入を拒んだ。ほか五人が拒否。森さんを入れた六人全員が、回答を拒んだことを理由に懲戒処分(戒告)に処せられた。
昨年一二月二七日、森さんは大阪地方裁判所に、不当処分の撤回を求めて提訴し、今回の口頭弁論(中垣内健治裁判官)を迎えた。
病院のユニフォーム姿で意見陳述に臨んだのは、三五年間、市民病院に従事してきた誇りから。きちんと仕事をしてきた姿を見てもらいたいと望んだ。看護師として「患者さんのプライバシーを含め、さまざまな個性や生き方を尊重し権利を擁護すべき職業の自分たちが、入れ墨調査のような人権侵害を認めてよいのか」という強い思いがある。
原告側代理人である共立法律事務所の桜井健雄弁護士は、「身体に関することは個人のプライバシーに属し、非常にセンシティブな情報で、公務員の仕事とは関係ない」と述べた。
橋下市長が業務命令と称し「入れ墨調査」をすることは第三者が身体を管理することに等しい。また回答拒否の職員を処罰し、どんな命令でも従わせようとさせるやり方も法的に問われよう。
法廷には、四〇人の定員を超え、支持者が廊下にまで溢れた。傍聴席からは、裁判への関心の高さとともに原告への共感がうかがえた。
(真野きみえ・ライター、2月22日号)