グーグルが仏ネット新聞に60億円――著作権料支払いに合意
2013年3月12日4:04PM
ネット新聞の読者が検索エンジンを使って記事を読む場合、グーグルは何の努力もなしに広告を掲載し、利益を得ているとメディア側から批判されてきた。
そんな中、米インターネット検索エンジンのグーグル社のシュミット会長は二月一日、エリゼー仏大統領官邸を訪問。オランド大統領立会いの下、「政治一般紙協会」(IPJ)会長で左派系週刊誌ヌーベル・オブセルバトワール会長のコラン氏と、仏ネット新聞社への補償金として約六〇億円の資金提供に合意・署名した。同氏は「グーグルと戦争するよりも良い解決ができた」と満足している。
ネット新聞の独立を目指す組合スピール(SPIIL)によると、グーグルのフランスでの売り上げは約一兆二〇〇〇億円だが、税金は約五億円しか払っていない。「今回の合意で得をしたのはグーグルではないか」「ネット新聞が支配され独立性が脅かされる」「編集者はますますグーグルに依存してゆく」と同組合の「スラート.fr」創立者の一人は心配している。
一四日、筆者がSPIILのメンバーの「メディア・パー」に問い合わせたところ、「グーグルの資金形態がまだ不明確なために資金提供(著作権料)の受け入れについては返答できない」と言ってきた。グーグルとの合意は記事の著作権料だとされる。グーグルの代表者と編集者や独立した有識者など七人で諮問委員会を設置して資金の配分などを決めてゆく模様だ。
「ルポルター・サン・フロンチェー(RSF、国境なき記者団)」の欧州担当責任者ヨワンヌ・ビアー氏は、筆者に対し「グーグルの資金提供は仏メディアの独立性を脅かすものではない。すでに仏政府がメディアを支援してきた同じシステムでなされるからだ」と回答。
グーグルがその著作権料を払うのは世界でもフランスが初めて。今後は世界のネット・メディアでも同様な要求が高まるのは必然だ。
(飛田正夫・ジャーナリスト、2月22日号)