偽装請負を告発した非常勤講師――高校と派遣会社を提訴
2013年3月27日6:07PM
非常勤講師を違法な偽装請負で働かせ、昨年九月に東京労働局から是正指導を受けた埼玉県深谷市の私立正智深谷高校と渋谷区の派遣会社イスト(本誌二月八日号「アルバイトで生活費かせぐ派遣教員」で既報)。三月四日、これを告発した二〇代女性の非常勤講師が両者を相手取り、自らの正規職員としての地位確認と約四五〇万円の未払い賃金支払いなどを求めてさいたま地裁に提訴した。同日会見した原告側弁護士によると、偽装請負で働かされた教員が高校を訴えたのは日本で初めて。
〇八年にイストに登録した原告は、同社と業務委託契約を結び、一〇年四月から正智深谷高校に勤務。業務委託の場合、請け負った側が自己の裁量で仕事を進めるのが前提となるが、原告ら同校の業務委託講師は、授業の進め方などを学校から直接指揮命令されていた。また試験問題の作成や採点など契約外の業務も課される一方、「コマ契約」ゆえにこれらの対価はゼロ。「直接雇用の人たちとまったく同じ働き方だった」(原告)にもかかわらず、年収は一六〇万円だった。
原告によれば、昨年一月にこうした働き方に疑問を覚え、当時の校長に直接雇用の非常勤講師として採用するよう打診。学校側もいったんは受諾し契約書も交わしたものの、のちに「イストとの信義に反する」などの理由で反故にし、次いで業務委託の契約更新も拒否したという。
同校ではこの後、業務委託の講師を派遣契約に切り替えたが、その時点で学校から排除されていた原告自身は今も救済対象となっていない。
なお全国私立学校教職員組合連合が昨年行なった調査では、全国の私立高校で少なくとも一四〇人の派遣や請負の講師がいることが判明している。これを踏まえ原告側は、裁判を通じて「派遣は合法とされているが、学校の先生まで派遣でいいのかを問題提起したい」という。
(古川琢也・ルポライター)