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国が経産省前テント撤去に向け仮処分命令――安倍政権が脱原発拠点に攻撃

2013年4月12日4:30PM

経済産業省前のテントでは24時間体制でメンバーが常駐している。(撮影/田中龍作)

 経済産業省のノド元に突き刺さった脱原発の砦が、自民党の政権復帰で危機に晒されている。

 去る三月一四日、経産省前テント共同代表の渕上太郎、正清太一両氏のもとに東京地裁から「占有移転禁止の仮処分命令」が送られてきたのだ。仮処分は国が申し立てたもので、「テント立ち退き要請」の前段階にあたる。強制執行などに備えて、占有者を明確にしておくための法的措置だ。

 国は「国有地を無断で使用した」として一一〇〇万円の損害賠償を請求するという。

 二〇一一年九月、平和活動家らが経産省の北西片隅に建てたテントは、脱原発運動の拠点として霞ヶ関や国会に睨みをきかせてきた。民主党政権下の昨年一月、当時の枝野幸男経産相が、「自主的な退去」を求めたことがあった。だが裁判所は介在せず、あくまでも経産省が求めたものにすぎなかった。テントは枝野経産相が区切った退去期限を一年以上過ぎても健在だ。

 原発推進の自民党政権は、民主党のように手ぬるくない。テントの渕上共同代表は仮処分の命令書を受け取った時、「段取りを踏んで来ているな」と感じたという。今後の対応について聞くと渕上氏は「自らの意志でテントを撤去するつもりはない」ときっぱり答えた。

 テントを運営するスタッフにも並々ならぬ苦労がある。権力側の“襲撃”に備えて二四時間体制でメンバーが常駐しなければならない。体にこたえるのは泊りだ。少ない人で週に一回、多い人で週に三回、テントで一夜を過ごす。「冬はすきま風で寒くて眠れない」。初期の頃からテントを守ってきた「徳さん」こと徳根和幸氏(四九歳)は話す。

「再稼働まっしぐらの安倍政権から脱原発の砦を守らなくてはならない」。こう願う市民たちが三月二二日夕、テント前に集まり仮処分に対する抗議集会を開いた。

 福島県双葉町から東京港区に避難している亀屋幸子さん(六八歳)がスピーチ台に立った――

「テントがなかったら私は立ち直れなかった。双葉町を奪われ、次にこの国は第二の故郷であるテントを奪おうとしている。テントを撤去する前に原発を撤去してほしい」。亀屋さんの悲痛な訴えに、会場からは「そうだ」と同調する声がしきりとあがった。

仮処分に対する抗議集会でスピーチする亀屋幸子さん。(撮影/田中龍作)

 四国は松山から駆け付けた参加者もいた。伊方原発の反対運動に携わる女性(自営業)だ。「皆がテントに関心を持っていることを伝えなくてはいけないと思ってきた。撤去するのであれば、国民的議論をここでやってほしい」。彼女はわが事のように切羽詰まった口調で語った。

 福島市に住む椎名千恵子さんは、「私にとってテントは育ててもらった実家のようなもの。(強制撤去になったら)籠城するつもり……生半可な気持ちではいられない」。こう語ると口を真一文字に結んだ。

 米国では凄まじい格差により病院にもかかれなくなった庶民が一一年秋、「私たちは九九%だ」と叫んでニューヨーク・ウォール街の公園を二カ月にわたって占拠(Occupy)し、格差の是正を訴えた。

 人々は自分たちを貧困のどん底に陥れている強欲金融資本主義に抗議するため、その中心地であるウォール街で「オキュパイ運動」を展開したのである。だが警察によって強制的に公園から排除されると運動は急速にしぼんだ。

 オキュパイ運動が公園から排除されたのは表向き「近隣住民の苦情から」だが、実際は運動の弱体化をねらい拠点を奪ったのだ。

 日本でも原発によって苦しめられている人々が、原子力ムラの総本山である経産省の一角をOccupyし、原発の廃炉を訴え続けている。テントが撤去されれば、日本の脱原発運動は大きな痛手を被る。原発推進政権はそこを狙って今後いろいろと攻撃を仕掛けてくるだろう。

(田中龍作・ジャーナリスト、3月29日号)

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