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岐阜県東濃三市・核融合科学研究所が合意締結――「調印ありきの背信行為」

2013年4月22日5:17PM

核融合科学研究所の実験開始に対する岐阜県庁への申し入れ行動。(撮影/樫田秀樹)

 岐阜県で多くの市民団体が抗議の声を上げる中、東濃三市(多治見市、土岐市、瑞浪市)と県は三月二八日、核融合発電の実験を目指す核融合科学研究所と、実験実施に合意する締結式を行なった。

 原発は核分裂利用の発電だが、核融合発電とは、超高温(一億度前後)と超高圧のドーナツ型真空容器で、バラバラのプラズマ状態にした重水素とリチウムの原子核同士を強制的に衝突させ(核融合)、生まれる熱エネルギーが水蒸気でタービンを回す発電システム。

 ところが、核融合では多量の中性子とトリチウム(三重水素)が発生する。市民団体「多治見を放射能から守ろう!市民の会」の井上敏夫代表は「トリチウムは、金属が熱するほど、すり抜けて外界に流出。内部被曝すると遺伝子を傷つけます」との怖れを語る。

 県内の住民が計画の存在に慌てたのは昨年一一月。研究所が、三市と県とで実験開始への同意協定を結ぶ方針を明らかにしたのだ。すると、「子どもたちを犠牲にできない」と、若い母親たちが動いた。一軒一軒を回り約二万九〇〇〇筆の反対署名を集めたのだ。

 三月二六日には一〇〇人以上の住民が県庁を訪れ、井上さんが「推進派も反対派も論議を尽くす検討委員会の設置を」との要請書を県知事宛に提出。ところが、その翌日、県は実験への同意を明かし、翌々日の二八日に冒頭の通り締結した。井上さんは「調印ありきの背信行為」と憤りを隠さない。

 実験では一年間で五五五億ベクレルのトリチウムが発生するが、「トリチウムは九五%が回収できる」と安全性を主張する研究所は、今後三年をかけて実験の準備を進めてから、九年間の実験に入る。

 安全か危険かの判断以前に「研究所や自治体とは徹底して話し合っていない」ことが住民には不満だ。ある女性は、「実験が始まる前に、赤ちゃんがいる私は引っ越します」と決めている。

(樫田秀樹・ルポライター、4月5日号)

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