アイヌ人骨“発掘”研究の実態は依然不明――北大のずさんな管理が発覚
2013年5月7日5:45PM
北海道大学は三月二八日、「北海道大学医学部アイヌ人骨収蔵経緯に関する調査報告書」を公表した。
一九三〇年代以降、同大医学部の人類学・解剖学者らが先住民アイヌの墓地などから大量に掘り出し、現在も学内に保持し続けている遺骨について、同大として初めて本格的に調査。約一八〇ページにまとめた。
しかし同報告によれば、「発掘」当時、研究者たちが残したはずのフィールドノートなどの一次資料はおろか、整理収蔵時に作成された「アイヌ人骨台帳」など肝心の原本書類までも〈所在は不詳〉。
また所蔵遺骨を三年がかりで再整理してみると、従来「一〇〇四体」と公表していた遺骨人数が、実は一〇四〇人分に上ることが判明するなど、これまでの管理のずさんさを改めて示すばかりで、それぞれだれの遺骨なのか、どのように掘り起こしたのか、といった実態解明にはほど遠い結果に終わっている。「頭骨コレクターまがいの研究は倫理にかなうのか」といった自己批判も見られない。
市民グループ「北大開示文書研究会」共同代表でアイヌ民族の清水裕二さん(七二歳)は、「掘られた本人や遺族など、被害者に向けて書かれた調査報告書とは感じられない」と話す。「当時の研究者たちや医学部の保存管理がまずかった、と述べられているだけ。大学はアイヌに対する責任を自覚していないのではないか」。
この問題をめぐっては、北海道在住の三遺族が遺骨返還を求めて同大を提訴しており、次回口頭弁論が今月一九日午前一一時半から札幌地裁で開かれる。
また同研究会主催のシンポジウム「さまよえる遺骨たちパート3 先住民への遺骨返還はセカイの流れだ。」が同二〇日午後一時一五分から札幌市教育文化会館で開かれる。詳しくはURL http://hmjk.world.coocan.jp/
(平田剛士・フリーランス記者、4月12日号)