文科省懇談会初会合で座長が修身教育肯定――道徳“教科”化を推進
2013年5月15日7:48PM
政府の教育再生実行会議の「道徳教科化提言」を受け、文部科学省が四月四日に「道徳教育の充実に関する懇談会」の初会合を開いた。会合では、座長に選ばれた鳥居泰彦慶應義塾学事顧問(七六歳)が、戦前・戦中の修身教育について「間違っていたところは少ない」と、問題ある認識を示した。
旧文部省が一九五八年、小中学校で道徳の時間を特設して以来、“教科”化していないのは、筆頭教科として児童・生徒に国家主義を教化し戦場に駆り立てた、戦前・戦中の過ちを繰り返さないためだ。
だが会合の冒頭で、下村博文文科相が「第一次安倍内閣では残念ながら途中で頓挫したが、今回は必ず新たな枠組みでの教科化を」と演説。しかし、教科化には学習指導要領改訂が必要だ。一〇年に一度の次期改訂は二〇一八年だが、文科省幹部からは、前倒しすべきだとの主張が出ている。
続いて文科省教育課程課担当者が、一四年四月からの使用を前提に全面改訂する『心のノート』(一三年度予算に約四億円計上)について、(1)分量は現行の一・五~二倍程度に増やす(2)内容項目ごとに読み物部分とノート部分をセットにし、授業で活用させる(3)内容は「偉人や著名人、伝統・文化等に関する読み物」を盛るなどの「基本的な考え方」を示した。(3)は文科省著作の小中学校『学習指導要領解説・道徳編』が「国への誇り、愛情を感じさせるものが多い」と記述しており、改定教育基本法の「国を愛する態度」を教化しようという意図が見られる。
懇談会の委員は、「つくる会」系教科書に関係が深い今田忠彦・貝塚茂樹両氏や、銭谷眞美氏ら文科省出身者が大多数。鳥居氏は、「敗戦後、教科書に墨を塗った際、修身は神社を扱った箇所以外、墨塗りは少なかったから、戦前の修身教育は間違いは少なかったと言える」と明言した。道徳“教科”化推進の結論が出る可能性は高い。
(永野厚男・教育ライター、4月19日号)