ふくしま集団疎開裁判で原告の申立を却下も――高裁は被曝の危険性を指摘
2013年6月3日5:17PM
福島県郡山市の小・中学生一四人が市に対し、年一ミリシーベルト以下の環境で学校教育を受けさせるよう求めた民事仮処分裁判(ふくしま集団疎開裁判)で、仙台高裁は四月二六日、申立を却下した。一方で判決文は、子どもたちが「低線量被ばくにより、生命・健康に由々しい事態の進行が懸念される」など原告側主張に沿った画期的な事実認定をしており、国や市の児童・生徒の保護に対する姿勢が厳しく問われる内容となった。
一昨年一二月の一審判決では、児童・生徒の健康に関する現状は「危険ではない」との判断。だが二審判決では、(1)市内の小・中学校にある一五二の計測地点中、文部科学省が「安全」とした一時間あたりの空間線量〇・二三マイクロシーベルトという基準を下回ったのは、九カ所だけ(2)除染も「一回では不十分」なのに、「作業が進まない」――と指摘。
これを受け、児童・生徒が「低線量の放射線に間断なく晒されているものと認められるから、そうした低線量の放射線に長期間にわたり継続的に晒されるところであり、チェルノブイリ原発事故後に児童に発症したとされる被害状況に鑑みれば……がん・白血病の発症で生命・身体・健康を損なわれる具体的危険性があり」と述べている。
さらに、原告側が求めている集団疎開についても、「国・地方公共団体がその費用により集団疎開措置を施さない限り……(健康被害の)事態を打開できず、ほかに実効的手段はない」と断定している。
ところが後半では一転して「生命・身体・健康に対しては……現在直ちに不可逆的な悪影響を及ぼすおそれがあるとまでは証拠上認め難い」という理由で、集団疎開による他地域での教育実施の必要性を否定。原告の主張をほぼ全面的に認めながら、申立は却下した。
判決直後に国会内で開かれた弁護団の記者会見で、柳原敏夫弁護士は「判決文を読み、キツネにつままれたような気持ちだ」と述べ、「子どもたちが被曝し、危険な状態にあるという原告側の主張を九九%認め、それを回避するために初めて集団疎開を『一つの選択肢』と評価しながら、放射能被害は後になって発生するのに『直ちに影響はない』という理由で避難させなくともいいと結論づけているのは、支離滅裂だ」と批判した。
(成澤宗男・編集部、5月10日号)