狭山事件50年で集会と現地調査――再審開始に期待
2013年6月4日5:30PM
後に部落差別、冤罪事件として知られることとなる女子高校生誘拐・殺人事件から五〇年の五月一日、舞台となった埼玉県狭山市で「狭山事件の真相を探る5・1集会と現地調査」が行なわれた。
集会には、この事件で無実を訴えながら三一年余りも獄に繋がれた後に仮釈放され第三次再審を請求中の無期懲役囚の石川一雄さん(七四歳)や支援者が参加。「足利事件」の菅家利和さんと「布川事件」の杉山卓男さんも駆けつけた。
菅家さんは「一日も早く自由の身になって、自分らと一緒に冤罪をなくすために全国を歩きたい」と石川さんを励まし、杉山さんは狭山事件で証拠とされる万年筆は「警察が偽装したのは間違いない。警察がおかしいのは、インクの色が違うこと。どうせ偽装するならインクの色も同じにしろと言いたい」と捜査の矛盾を指摘した。
石川さんは「警察に騙されて兄を真犯人と思い込み、兄を庇うためにウソの自白をしてしまった。一日も早く無罪を勝ち取りたい」と決意を新たにした。
再審申請の中山武敏主任弁護人は、裁判所・検察・弁護団による三者協議が一二回続いており、この中で検察によって隠されていた証拠が一二九点開示されたこと、石川さんの無罪の決め手となる逮捕時の石川さんの筆による「上申書」も含まれ、脅迫状との筆跡の違いが浮き彫りになったことなどを報告。「五月に次の三者協議があり、裁判所の判断がいつ出されてもおかしくない段階」と再審開始に向け全力を挙げると述べた。
また「狭山事件の再審を求める市民の会」事務局長でルポライターの鎌田慧さんは「被差別部落の人たちは捜査当局が考えたよりも、はるかに識字能力が低かった。当たり前の教育を受けられず、文字を書けない人たちには、脅迫状を書くという発想そのものがない」と、部落差別の根深さと冤罪との関係を指摘した。
(豊田直巳・フォトジャーナリスト、5月10日号)