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三鷹バス痴漢冤罪事件――奇妙な“新説”で有罪判決

2013年6月6日4:56PM

「バスが揺れている状況の下で、右手で携帯電話を操作しながら、左手で痴漢行為をすることは容易とはいえないけれども、それが不可能とか著しく困難とまではいえない」

 まるで異端審問ではないかと言いたくなるような非論理的な判決が五月八日、東京地裁立川支部で出た。「三鷹バス痴漢冤罪事件」(本誌二〇一二年八月三一日号で既報)で、一貫して無実を訴えてきた公立中学校教諭・津山正義さんに対し、倉澤千巖裁判官は罰金四〇万円の有罪判決を言い渡した。冒頭は判決理由の一節である。

 一一年一二月二二日の夜、三鷹市内の小田急バス車内に乗っていた津山さんは、同乗していた女子高校生の尻のあたりを触った疑いで逮捕された。学校に忘れた財布を取りに行く途中で、その後、交際相手の女性と会う予定だった。

 物証は皆無だった。三鷹警察署は両手の微物鑑定を行なったが、女子高校生の衣服の繊維は検出されなかった。バス車載のカメラ映像にも痴漢行為は映っていない。

「痴漢」の根拠は女子高校生の供述だけ。それも腕をつかんで津山さんが犯人だと確かめたわけではない。当時津山さんはリュックサックを腹側にかけていた。リュックが尻に触れたのを勘違いした可能性が高いと弁護側は主張した。

 車載カメラの映像には、津山さんが左手でつり革を持ち、残りの右手で携帯電話を操作している様子も映っている。両手がふさがっていれば触れることはできない。無実を裏づける決定的証拠である。ところが倉澤判決は、バスが工事現場を通過する際に激しく揺れ、つり革を握る津山さんの左手がカメラの画角から外れた瞬間を指して、このときに左手で触ったのだと決めつけた。検察も思いつかなかった“新説”だった。

「やっていないものはやっていない。闘います」という津山さん(今村核主任弁護人)は、東京高裁に控訴して争う方針だ。

(三宅勝久・ジャーナリスト、5月17日号)

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