東電福島第一原発地下水の海への放出――県漁連合意せず混乱続く
2013年6月17日2:08PM
福島第一原発の敷地内からくみ上げた地下水を海に放出する計画に関して東電は五月一三日、福島県漁業協同組合連合会に説明したが最終的な合意が得られず、放出開始時期が不透明になった。県漁連は地下水放出について東電だけでなく国の関与を明確にすることを要望。資源エネルギー庁の高原一郎長官は一六日に福島県庁を訪れ説明会の実施を説明した。
福島第一では、核燃料を冷やすために注入している水が原子炉から建物地下に流れ出ているほか、一日に約四〇〇トンの地下水が流入し高濃度の放射能を含む大量の汚染水が発生。現在までに約二六万トンの汚染水を貯蔵しているが、二年半後には満水になる。
東電は汚染水低減対策の一環として、汚染されていない地下水をくみ上げて地下水位を下げ建物への流入量を減らす「地下水バイパス」を計画。くみ上げた地下水は放射能を測定後に海へ放出する。
約一年前から東電は、月に一回程度開催されている県漁連の組合長支所長会議で計画を説明。県漁連の野崎哲会長は「汚染水を海に出さないためにはやむなしという苦渋の判断」とし、合意ができたと感じていたという。
ところが一三日の会議では、参加していた組合長らが各組織の会員たちに地下水バイパスの説明を十分にしていなかったことがわかり、組合長の中には地下水と汚染水を混同している人もいた。加えて「地下貯水槽からの漏洩事故も組合員にはショックだった」(野崎氏)と、最終合意に至らなかった。
一方、県漁連の混乱が大きく報道されたことで、海洋放出を東電まかせにしていた国の放任姿勢が明らかになった。福島第一敷地内の水を意図的に海洋に出すのは事故直後の海洋放出以来。汚染の度合いに関係なく世界の耳目を集めるだろう。国は責任の所在をどう考えていたのか。収束作業の混乱はさらに続きそうだ。
(木野龍逸・ジャーナリスト、5月24日号)