立憲主義の破壊に警鐘――「96条の会」が発足
2013年6月23日4:45PM
憲法改正権を規定する九六条の先行改憲に反対する「96条の会」が五月二三日、東京・永田町で発足記者会見を行なった。憲法学者など三六人が同会の発起人に名を連ねた。与党自民党を中心に、憲法九六条が定める改憲発議要件を「衆参両院それぞれの三分の二以上の賛成」から「過半数」に変更しようとする動きがあり、これに危機感を強めた動きと言える。
山口二郎・北海道大学教授(行政学・政治学)は、「九六条の先行改憲だけは立場を超えて阻止することが必要だ。そうでなければ立憲政治は破壊されてしまう、という危機感から幅広く結集した」と経緯を語った。そして「裏口から改憲を導入するこのやり方は、民主政治あるいは立憲主義を破壊することであり、この国の保守政治の劣化の表れだ」と批判した。
同会代表で憲法学者の樋口陽一・東北大学名誉教授は、「権力を制限することが立憲主義の基本だ」とし、「九六条先行改憲は法理論的に無理な話だ」と批判した。さらに、諸外国で憲法改正条項を緩和した例は、「立憲主義を掲げた国では、私の知る限りはない」と語った。
改憲派憲法学者の小林節・慶應義塾大学教授も、発起人に加わった。小林教授は、九六条改正派が「憲法を国民の手に取り戻す」と訴えていることを、「嘘八百だ。憲法に縛られるべき権力者たちが、国民を利用して憲法を国民から取り上げようとしている。私は、本当に驚き怒っている。これは憲法破壊だ」と批判した。そして、「憲法改正権(九六条)の上に憲法制定権がある」とし、「上位の権限に対して下位の権限が触れること自体が矛盾だ」と語った。
憲法九六条先行改憲の動きは、近代立憲主義への挑戦ではないか。夏の参議院選では、国民の成熟度が試されることになる。
(星徹・ルポライター、5月31日号)