東電が交渉の場で発言――「原発を続けたい」
2013年7月5日4:57PM
アルプス(放射性物質除去装置)の高濃度汚染水漏れの疑いや賠償請求個人情報紛失など、トラブルや不祥事が続く東京電力だが、東京都内で行なわれた市民団体との交渉の場(六月一一日)では、「今後も原発を続けていきたい」などと発言していた。
発言は、消費者として東電に原発中止を求める交渉を二〇年以上続ける「東京電力と共に脱原発をめざす会」(=共の会、東井怜代表世話人)との今年二度目の交渉の場で飛び出した。交渉には同会から約二〇人、東電から松本純一東電原子力改革特別タスクフォース事務局長代理、會田満男原子力センター所長ら五人が出席。やりとりの中で松本事務局長代理は原発継続の理由として「原子力を発電のオプションとして持つことが電力の安定供給の上で有利」などと返答。共の会側からは「ここに至ってもまだ安定供給と言うのか」と抗議の声が上がった。
汚染水漏れが続く地下貯水槽の問題については共の会の山崎久隆さん(たんぽぽ舎)が、「貯水槽は、本来は水を入れてはいけない産廃処分場と同じ構造で、漏れてはいけない高濃度塩水やトリチウム汚染水を入れたのは論外。アルプスが稼働せず、入れる場所がないために、予定を変更して入れた結果、漏れたのでは」と指摘したが、小林剛原子力センター課長は答えられなかった。
また、4号機の燃料取り出し作業のクレーン設備について山崎さんが、長周期で津波が巨大化する「アウターライズ地震」による危険性を指摘したのに対し、小林課長は「ワイヤーブレーキ二重化などで落下を確実に防止できる」と説明したものの、具体的な強度試験結果は示さなかった。
共の会の小倉志郎さん(元原発技術者)は「東電は原発の安全に対して具体的に答えられない状態だ。『安全を確認した上で』と枕言葉を並べても実質的な意味はない」と感想を述べていた。
(藍原寛子・ジャーナリスト、6月21日号)