インターネットでのいじめも明記――いじめ対策法が成立
2013年7月8日5:09PM
学校のいじめ問題が深刻化する中、六月二一日の参議院本会議で、「いじめ防止対策推進法」が可決、成立した。
同法は、「いじめ」を「特定の児童生徒等に心理的または物理的な影響を与え、本人が心身の苦痛を感じるもの」と定義。インターネットを利用して行なわれるいじめも含め、「児童等はいじめを行ってはならない」と、明記した。
国・自治体・学校などが「いじめ防止基本方針」を定め、すべての学校に「複数の教員や外部専門家等による委員会組織」を常設することも定められた。
いじめがあった場合の対策についても記されており、事実の確認、被害者側への支援、加害者側への指導・助言、警察との連携や通報などを行なうほか、加害児童に対する懲戒や出席停止の措置も取るものとしている。命に関わるような重大事態については、教育委員会などが調査を実施し、結果を被害者側に開示し、調査が不十分な場合には、自治体の長が第三者機関などを設けて再調査できる。
与党案と民主・生活・社民提出の三党案を一本化し、本法制定のために獅子奮迅の努力をした小西洋之参議院議員は「『学校の委員会組織』の設置と『学校いじめ防止基本方針』の策定を通して、欧米のいじめ対策と同様にいじめを巡る構造的な問題を解決するための仕組みが構築された点に最大の意義がある。今後は運用を充実させることが重要」と述べる。
今、多くの子どもたちは、競争と評価と効率を最優先する社会の中で、家庭でも学校でもありのままで自分を認めてもらえず、孤独と絶望の中で演技をし、呻吟し、ついには「問題行動」へと追いやられている。いじめをなくすための唯一かつ根本的な対応策は、「親や教師が、一人ひとりの子どもと真摯に向き合い、受容的に応答できるような生育環境と教育体制を確立すること」に尽きる。本法にこれを期待できるのだろうか。
(福田雅章・一橋大学名誉教授、6月28日号)