東京都議選にも「一票の格差」問題――共産党躍進で「自共対決」に
2013年7月8日5:08PM
当選の報が入るたびに、花付け会場は拍手と歓声でわいた。
六月二三日、自民党本部の一階。安倍首相が「準国政選挙」と位置づけた東京都議選は、自民党五九人と公明党二三人の候補者全員が当選し、参議院選挙への「風」をこしらえた。
都議会「政権復帰」に、石原伸晃都連会長は「都民のニーズに応えることができた」と胸をはった。しかし選挙戦の強い武器となったアベノミクスの雲行きは怪しい。株価は乱高下を繰りかえし、長期金利も上昇している。恩恵に浴しているのは自動車、電機メーカーなど輸出企業と、手数料で儲けた証券会社など一部の層だ。
それでもアベノミクスの風は民主党に襲いかかった。二〇〇九年は五四議席を獲得したが、今回は一五議席にまで急落。都議会第四党に転落した。この四年間、八ッ場ダムや築地移転問題など、自民党との対立軸を打ちだすことは最後までできなかった。
都議会民主党の最初の女性議員として五期目にのぞんだ品川区の馬場裕子氏も落選。「市民が主役」の姿勢を貫き、女性議員を一〇人に増やした。が、今回その一〇人はすべて敗れ、ゼロになった。
政権を取るため偏らず、幅広く――そうした民主党の姿勢は結果的に「都民の信用を失うことになった」(馬場氏)。
「脱原発」を訴えるみどりの風や社民党、生活の党などが議席を確保できないなか、躍進したのが共産党だ。憲法改正や原発再稼働へひた走る自民党への都民の不安を吸収して、八議席から一七議席へと倍増。女性議員も一一人と議会最多で、議案提出権も回復した。
「都議会では自共対決になる」
二四日、新宿駅前には満面の笑みを浮かべる当選者たちの声が響きわたった。とりわけ注目を集めたのが豊島区選出の米倉春奈氏。一九八八年生まれの二五歳は、都議会最年少の議員になる。
大学時代から就職、非正規雇用、自殺問題など現代の若者の「生きづらさ」を目の当たりにしてきた。
「努力が足りない自分が悪い、そういう思考回路に多くの若者が陥っている。そんな社会は生きづらい。そういうことじゃないんだと、若い世代の声を増やして、仲間にして、議会にぶつかっていく」
しかし東京都は、より激しい競争社会へと移行しつつある。猪瀬直樹知事が掲げるアジアヘッドクォーター特区は、規制緩和と税制優遇で外資を呼びこみ「世界で一番の都市」を目指す。福祉の党を自称する公明党も「成功してほしい」と後押し。日本維新の会の二議席、みんなの党の七議席も、市場原理を重んじる猪瀬氏をバックアップする見通しだ。
自民党と公明党の圧勝に終わった都議選だが、投票率は四三・五〇%と過去二番目の低さ。このかん自民党は名古屋市長選(四月)、さいたま市長選(五月)、静岡県知事選(六月)で連敗。都議選の結果が参院選にそのまま反映するかは不透明だ。
また、都議会一二七の議席の正当性についても疑問があがっている。環境総合研究所の青山貞一氏の分析によると、全得票に対する自民党票の割合は三六%だが、全有権者に対する割合は一五%。有権者数は北多摩第三が一議席あたり一二万四一〇八人であるのに対し、千代田区は四万二六五四人。「一票の格差」は二・九一倍だ。青山氏は「三倍近い。明らかに不公平ではないか」と指摘する。
議会では政策論とともに選挙制度についても問われてきそうだ。
(野中大樹・編集部、6月28日号)