水俣病最高裁判決はどこへ――認定基準の見直しを
2013年7月8日5:04PM
「すべての水俣病被害者の全面救済を求めるシンポジウム」(主催・日本弁護士連合会)が六月一日、東京都内で開催され、患者勝訴の最高裁判決を直視しない環境省の姿勢に、批判の声が相次いだ。
まず、溝口訴訟弁護団の山口紀洋弁護士が、感覚障がいのみの水俣病を認めた最高裁判決を解説。水俣病については司法判断と行政判断は別だと環境省が主張する二重基準はないと明言した。したがって、行政が水俣病の概念を恣意的に決めることはできないとし、現行の認定基準である「七七年判断条件」の見直しを主張した。
七七年判断条件は、以前の基準より厳格で、複数症状の組み合わせを条件としたため、認定患者数は減少した。厳格化の理由について丸山定巳・熊本大学名誉教授は「患者が増えると補償金の額も増える。表向きにはいわないがチッソも行政もこれを心配した」と説明。多くが「患者」と認められず、その後の低額な救済策へ流れた。また、元チッソ労働組合委員長の山下善寛氏は、「チッソの労働者は労災による健康被害もあって、水俣病認定されなかった人も多い」と述べた。
さらに現在の行政による水俣病施策は、「認定患者に特化され、未認定の患者さんの生活支援が課題になっていない」(加藤タケ子氏・ほっとはうす施設長)。胎児性の認定患者・永本賢二氏は、「まだ認定されていない人の気持ちをわかってほしい」と述べた。
判決以降、環境省は認定基準を見直さないと発言してきたが、「行政にとっては誤りを正す千載一遇の機会」と鈴木堯博弁護士。だが、「患者が勝訴しても、敗訴した行政が判決の解釈をするのが現状」(花田昌宣・熊本学園大学水俣学研究センター長)だ。
国や県は最高裁判決に、どこまで向き合えるのか。花田氏は言う。
「ボールは行政に投げられた」
(奥田みのり・フリーライター、6月7日号)