仏オランド大統領・安倍首相の原子力協力――仏ア社が高浜原発にMOX
2013年7月9日4:30PM
関西電力高浜原発三号機(福井県高浜町)に今月下旬、仏アレバ社が製造したプルトニウムとウランの混合酸化物(MOX)燃料が運ばれる予定だ。稼働していない高浜原発に今回輸送が実施された背後には、従来の原発政策の復活を狙う安倍晋三内閣に便乗しようとする仏政府の思惑がある。
ア社は、「3・11」で日本へのMOX燃料輸送を中断。関西電力側も原子力規制委員会が七月に予定している原発新規制基準の策定に合わせ、高浜原発の再稼働審査を同委員会に申請する予定だが、再稼働の見込みは立っていない。仏市民団体「核から抜けだす」は、「いつ稼働するか分からない原発へ、原発事故の収拾も程遠いのに危険なMOX燃料を送るのは恥知らずだ」とア社を批判している。
だが、このほど来日したオランド仏大統領は安倍首相との間で、「原子力分野での協力強化」をうたった共同声明に調印。「核燃料サイクルのパートナーシップ深化」と称して青森県六ヶ所村の再処理施設操業開始と並び、「使用済み燃料の再利用」を盛り込んだ。ア社の貴重な収益源となっている、MOX燃料の販売を継続する仏側の希望を反映した形だ。
一方、原発輸出を「成長戦略」に取り込みたい安倍首相は、三菱重工がア社と開発し、トルコ政府が建設に合意した原子炉「アトメア1」の今後の売り込みを期待している。二〇一一年度に約三〇〇〇億円の損失を出して以降、収益悪化が止まらないア社を抱えた仏側も同じだろう。
だが、核燃料サイクルは日本で破綻しており、そこからア社がどれだけ利益を引き出せるか疑問だ。「アトメア1」についても黒海を望む建設予定地で住民の反対運動が起きていて、完成できるかどうか不確定要素が残る。日仏両国は再び原発を「カネのなる木」にしたい意向だが、その前に事故収拾に「協力」し合うのが筋だろう。
(成澤宗男・編集部、6月14日号)