横浜・副読本「虐殺」を削除――朝鮮人「殺害」に
2013年7月9日4:17PM
横浜市は、市立中学校の今年度版副読本『わかるヨコハマ』から関東大震災における朝鮮人の「虐殺」という表記を削除した。
副読本は二〇〇九年度から一一年度まで、「自警団の中に朝鮮人を殺害する行為に走るものがいた」といった記述だった。昨年度から「軍隊や警察、在郷軍人会や青年会を母体として組織されていた自警団などは朝鮮人に対する迫害と虐殺を行い」と改訂されている。
ところが一二年六月二五日付の『産経新聞』が一面で「横浜市教委 書き換え」というタイトルで、「議論がある」部分を改訂したなどと批判。七月には自民党の横山正人市議が市議会で「『虐殺』という表現は中学生の副読本にふさわしくない」と攻撃し、山田巧前教育長もこれを認めて、「誤解を招きかねない」と、再改訂を確約した。
このため市民団体の「歴史を学ぶ市民の会・横浜」は昨年一一月、「どの部分が誤解を招くのか」等について回答を求める公開質問状を提出。ところが今年一月になって市教委が発表した回答文にはこうした質問について答えず、「愛国心教育を大切にする」といった抽象的内容に終始し、今年度の副読本の記述についても「在郷軍人会や青年会を母体として組織されていた自警団の中に、朝鮮人や中国人を殺害する行為に走るものがいた」と再改訂したもの。昨年度の副読本は、五月に市が回収した。
これについて、「歴史を学ぶ市民の会・神奈川」の神谷幸男さんは、「自民党や歴史修正主義者にとって、当時の軍・警察の行為を単なる『殺害』より『虐殺』とより強く表現すると面白くないのだろう。特に自民党が改憲草案で自衛隊を『国防軍』と格上げしようと狙っている昨今、軍隊のイメージを落とすような記述に敏感となっているのではないか」と語っている。
(成澤宗男・編集部、6月28日号)