ローマ教皇発言に笹川氏が“抗議”――「出世主義はハンセン病」
2013年7月16日7:33PM
ローマ教皇(法王)フランシスコが「出世主義はハンセン病」と差別を助長しかねない失言をし、日本財団会長の笹川陽平氏が六月一二日付で、教皇に“抗議”の書簡を送っていたことがわかった。
六月二六日付の笹川氏のブログによれば、〈六月六日、ローマ法王はカトリック聖職者や教皇庁スタッフの育成機関「教皇庁聖職者アカデミー」で聖職者の過度な出世主義を批判する演説を行い、この中で「出世主義はハンセン病」と発言〉したとのこと。また、〈このことは、ハンセン病が悪い者の「象徴」として使われた形で、ハンセン病患者に対する差別を助長する恐れがあります〉として、WHO(世界保健機関)ハンセン病制圧特別大使、日本政府ハンセン病人権啓発大使の立場から書簡を送ったと言い、その内容は厳しい。
〈これは、この病気について深く染みついた固定観念を強めてしまうだけであり、最も嘆かわしい比喩であります。この病気に対するスティグマを強めたり、ハンセン病回復者に苦痛を与えたりすることが聖下の意図ではないことは、疑う余地はありません。しかし、今回の場合、結果的にそうなってしまったと言わざるを得ません。聖下のお言葉は広く多くの方に伝わり、影響力がありますゆえ、言葉の選択において細心の注意を払っていただくよう、強くお願い申し上げます〉
笹川氏は父の良一氏が「らい菌」ワクチンを自らの身体に注射するなど、二代にわたりハンセン病撲滅に努める筋金入り。日本財団もハンセン病に世界で約二億ドル、国内で約一三四億円の助成をするなど世界一の規模。日本でも悲惨な差別の歴史があるが、一九八五年の未制圧国(一万人当たりに一人以上の患者がいる国)一二二カ国・患者約五二〇万人は激減し、今はブラジルのみとなった。
財団によれば書簡は教皇に届いたが返事はまだないという。
(平井康嗣・編集部、7月5日号)