PC遠隔操作事件でアクセス――記者5人を書類送検
2013年7月16日7:32PM
パソコン遠隔操作事件にからみ、警視庁が六月二五日、『朝日新聞』記者三人と共同通信社記者二人を、不正アクセス禁止法違反容疑で書類送検した。事件の「真犯人」を名乗る人物が犯行予告などを送信するのに使ったフリーメールのサーバーに、パスワードなどを使って接続したことが、不正アクセス(利用者の承諾なしにアカウントにアクセスする行為)にあたるとされたのだ。
だが、記者がサーバーへのアクセスを試みたのは事件の真相に迫る取材活動の一環であり、単なる興味本位とは大きく異なる。事件で逮捕された容疑者が一貫して犯行を否認し、冤罪説も根強い中での記者の書類送検は、取材に対する捜査当局の「無言の圧力」になりかねない危険なものだ。
共同通信社は今年四月、事件を担当していた自社の記者が、サーバーへのアクセスを行なっていたとする記事を配信。「パスワードは犯行声明の内容をヒントに類推した文言を入力、偶然アクセスできた」と経緯を説明し、法律に形式上抵触する可能性があることから、編集局長が「取材上、行き過ぎがあった」などとコメントした。
これに対し、『朝日新聞』は書類送検を報じた二六日付の紙面で「正当な取材の一環で法律上も報道倫理上も問題ない」とする見解を表明。犯行予告メールにはパスワードなども記されており、真犯人とみられるパスワードの利用権者が「アクセスを承諾していたのは明らか」と主張した。共同通信社も、書類送検について社会部長が「事件の真相に迫るための取材行為だった」とコメントし、記者を擁護する姿勢に転換している。
共同通信社では、記者の行為を一方的に「行き過ぎ」とした編集局長に対し、社会部を中心に反発が高まっていた。同社の記者は「手続き上、書類送検されたが取材は正当なもの。記者を萎縮させたい狙いは明白だ」と話している。
(北方農夫人・ジャーナリスト、7月5日号)