都教委が特定の教科書排除――事実なのに「不適切」
2013年7月30日7:05PM
六月二七日、来年度に東京都立高校で使う教科書のうち実教出版の「高校日本史A」と「B」に、東京都教育委員会は「都立高での使用が適切ではないことを各高校に周知する」との見解を示した。
「一部の自治体で、国旗掲揚、国歌斉唱など公務員への強制の動きがある」(概要)との記述が、「都教委の考え方と異なる」との理由で「不適切」とされたのだ。
これは、特に、東京都と大阪府の公立学校での式典で、国旗に起立し君が代斉唱を義務付けていることを説明したものだ。
琉球大学の高嶋伸欣名誉教授は「その説明は事実じゃないですか。文部科学省の検定でも認められている。この見解は出版社への営業妨害です」と憤る。同時に、「四人の教育委員が一言も発言しなかった」ことが大問題だと訴えた。
六月二七日の都教委定例会を傍聴した元教員の根津公子さんは以下のように報告している。
まず、木村孟教育委員長が「都教委の方針と異なる記述があることについて、指導部に指示して教育委員会の見解をまとめさせた」と言ってから、指導部長が冒頭の「見解」を読み上げた。
つまり、議論の前に決定ありきだった。だが、読み上げの間もそのあとも、教育委員の一人で、『五体不満足』などの著者、乙武洋匡氏は「顔を上げずにうつむいているだけだった」。全日本柔道連盟の暴力事件に、「理事会はどんな議論をしているのか!」と理事会に厳しい態度を見せる元柔道家の山口香教育委員も無言だった。
根津さんは「教育委員は、定例会での議題に発言する義務がある。議論前の決定ならば批判をすればいいし、わからなければ質問すればいいのに、責任放棄としか思えない」と失望を隠さなかった。
木村教育委員長は「決定は委員の総意」としたが、その経緯を問う都教委高校教育指導課への回答要請に対する反応はなかった。
(樫田秀樹・ジャーナリスト、7月19日号)