TPPのマイナス影響試算――家計にもデメリット
2013年8月7日8:15PM
TPP(環太平洋戦略経済連携協定)参加が国民生活に与える影響を試算してきた「TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会」が七月一七日、第三次TPP影響試算結果を発表した。
本発表では、第二次発表時(本誌七月一二日号既報)に試算途中であった「全産業の生産、雇用・都道府県民所得への影響」試算が完了。それによると、TPP参加で農林水産物の生産額が減少した場合、他産業への影響は、全国でマイナス一一兆六九一八億円にもなることが示された。
都道府県別では、農林水産物の生産額減少による影響を一番受けるのが、酪農や畑作が主産業である北海道。北海道単体でマイナス一兆二四七二億円。次いで沖縄(同三八三六億円)、鹿児島(同三〇九三億円)と続く。いずれもTPP参加で、酪農やサトウキビなどが壊滅的な打撃を受けるとされている県だ。また、他県の生産額減少の影響を最も受けるのが東京。農林水産業の減少額こそ少ないものの、他関連産業に及ぶマイナスの影響は一兆八五一億円に。
本試算にあたった土居英二静岡大学名誉教授は「農林水産関連の産業が落ち込み所得減になれば、その分、消費も落ち込む。国民の消費減の影響は、東京や大阪などの大都市の方が大きい」と指摘。
所得ベースでみた関税撤廃の影響は、事業所得と家計所得の減少が全国で四兆二六二七億円。輸入関税撤廃で物価低下が見込まれるが、それでも実質家計所得の増加は全国で二兆四九三五億円。所得減少が実質家計所得の増加を上回り、総額で一兆七六九二億円のマイナス。「輸入関税撤廃で家計にプラス面もあるが、それを上回るデメリットが示された」と土居教授。安価な輸入品によって恩恵を多く受けるとされた東京でも、一四四八億円の所得減になるとされた。
これでもまだ、日本はTPP参加に突き進むのか。
(弓削田理絵・編集部、7月26日号)