経産省スラップ訴訟のお粗末――被告を人間違え
2013年8月21日10:10PM
国・経済産業省が、東京・霞が関の同省前の土地明け渡しと、土地使用料相当損害金一一〇〇万円を、反原発を訴える渕上太郎氏(七〇歳)と正清太一氏(七五歳)に請求している「経産省前テントひろば裁判」の第二回口頭弁論が七月二二日、東京地裁一〇三号法廷(村上正敏裁判長)で開かれたが、ここで経産省側の前代未聞の事実誤認が被告側の河合弘之弁護団長によって明らかにされた。なんと被告を取り違えていたのだ。
そもそもの訴えの基になったのが、経産省大臣官房厚生企画室の波留静哉室長が作成した「報告書」と題する文書で、第一回口頭弁論(五月一八日)の際に経産省側から提出され、証拠採用されていた。ところが、この「報告書」にある証拠写真で正清氏とされていた人物がまったくの別人だったのである。訴えの根拠として提出した証拠が人間違いとはマンガチックですらあるが、それをチェックもせずにそのまま証拠提出した検察側も大きな失態である。
報告書にある写真は、(1)四月一七日の記者会見(2)四月二六日の記者会見(3)五月二日の記者会見――の三枚でいずれもテント前でのもの。しかし、正清氏は(1)の会見時には四国にいた。(2)(3)の写真ではご丁寧に顔を隠され、別人のAさんと誤認。証拠上はこのAさんが「被告」とされていたのである。しかもこれらの写真の撮影者は「調査職員 経産省大臣官房個人情報保護室個人情報一係長 堀口和幸」と報告書に記載されている。個人情報を保護する立場にある者が逆のことをしてしまった。
とにかく誰でもいいから経産省前から追い出したいというスラップ(恫喝)訴訟であることを、はからずもさらけ出してしまった格好だ。裁判の取り消しを求める被告側に、さすがの裁判長も「次回までに検討します」と言わざるを得なかった。国はこんな裁判よりもやるべきことは他にあるはず。
(これひさかつこ・ジャーナリスト、8月2日号)