公務執行妨害で罰金四〇万円――歩いていて逮捕勾留
2013年8月28日10:49PM
「まさに青天の霹靂。花見に行く目的で桜橋を目指して歩いていただけ。それが公務執行妨害で逮捕されるなんて」――。
七月二四日、東京地裁の法廷で、最終弁論の後、原田浩さん(仮名、五十二歳)は、意見陳述を行ない無罪を主張した。しかし、八月二日の判決で安東章裁判長は、公務執行妨害により罰金四〇万円の支払いを命じた。
原田さんは三月二四日、浅草方面の桜橋で花見をしようと、吉野通りと明治通りとが交わる泪橋交差点方面に向け歩道を歩いていた。ニット帽にマスク、背にはリュックといった格好だった。すると後方からパトカーが来て、突然警察官らが職務質問のため歩くのを止めるよう執拗に迫ってきたという。
パトロール中の警察官らは、「ニット帽を深くかぶり、マスクをしていて、目の辺りしか顔を見せていない状態」「(山谷が)犯罪多発地域と認識されている場所」などの理由から原田さんを挙動不審者と決めつけたが、ここ一〇年の警視庁の統計で山谷が特別に犯罪の多い地域とはなっていない。
原田さんは、警察官らの高圧的な態度から職質に応じる必要はないと、そのままその場を立ち去ろうとしたが、その中で警察官一名が「転倒」。「転び公妨」と疑われる形で現行犯逮捕された。
裁判では、警察官らの職質の適法性、原田さんの暴行の有無が争われた。多賀亮介弁護士は言う。「裁判所の判断としては、警察官が二、三人同じことを言っているから信用できる。そういう前提。しかし警察ではいくらでも口裏合わせをする機会があった」。また、「原田さんは最初は徹底的に闘う意欲を見せていたが、終盤は支援が入るまで拘禁反応と思われる症状で気力を奪われていった」とした。
一三一日にも及ぶ勾留から二日ようやく解放された原田さんは後日、「(警察などの)やり方が偏見に満ち満ちていて許せない」と語った。現在、控訴を検討中という。
(西村仁美・ルポライター、8月9日号)