「嫡出」か否かの記載を強制する戸籍法49条――最高裁判断「憲法に反せず」
2013年10月17日8:24PM
出生届に「嫡出」か否かの記載を義務付ける戸籍法四九条二項一号の規定が法の下の平等を規定した憲法に違反するとの訴えに対し、最高裁第一小法廷(横田尤孝裁判長)は九月二六日、「憲法一四条に反しない」とする判決を下し、一、二審同様、訴えを棄却した。
原告の菅原和之さん夫妻は事実婚で子は婚外子扱いとなるが、二〇〇五年に誕生した二女の出生届で「嫡出でない子」という欄への記載を拒否。世田谷区は出生届を受理せず住民票も作らなかったため、区に対し住民票作成を求め提訴。一審で勝訴するが控訴審、最高裁で敗訴した。そのため、一一年に再度、区と国を相手に住民票作成と戸籍法四九条を違憲とする裁判を提訴した。その上告審が今回の判決だ。今年一月に区が職権で二女を戸籍に記載したが、菅原さんは「〇八年に国連人権B規約違反と勧告された戸籍法の差別規定を撤廃したい」と法に関する訴えは取り下げず、裁判を続けた。
判決は「規定それ自体によって、嫡出でない子について嫡出子との間で子又はその父母の法的地位に差異がもたらされるものとはいえない」とし差別規定ではないと判断した。原告代理人の藤岡毅弁護士は「憲法上の疑義がないわけではないとした一審よりも後退」「国際感覚に乏しく先の(民法の婚外子相続差別規定)違憲判決と対照的」と批判。家族法研究者の二宮周平・立命館大学教授も「欧米諸国や国連文書では『嫡出』概念自体を用いないようにしている」とし「判決は、チェック欄の記載が事務取扱いの便宜に資するとするが、出生による差別の違憲審査基準は厳格であり、必要不可欠な制度でなければ違憲」と指摘する。
ただ、「父母の婚姻関係の有無に係る記載内容の変更や削除を含め、出生届について、戸籍法の規定を含む制度の在り方についてしかるべき見直しの検討が行なわれることが望まれる」との櫻井龍子裁判官の補足意見を引き出した。
「主張が認められず残念」と言う菅原さんも、この補足意見は評価する。司法に訴える手段は一応終了。今後は国会での法改正に望みを託し、「民法の婚外子相続差別撤廃に加え、戸籍法の出生登録差別も撤廃されるよう臨時国会に先駆けて、仲間と一緒に法務省交渉に臨む予定です」と話した。
(宮本有紀・編集部、10月4日号)