国連で各国政府閣僚が宣言採択――LGBT差別撤廃を
2013年10月25日4:27PM
国際社会で長年無視され続けてきたセクシュアルマイノリティに関する問題に世界が声を上げた。九月二六日、国連本部(ニューヨーク)に各国政府の閣僚級が集合し、「性的指向及び性自認に基づく暴力及び差別をなくすための閣僚宣言」を採択した。この問題で、閣僚級が一堂に会したのは初めて。
米国のケリー国務長官やオランダ・ブラジル・クロアチアの外務大臣らに続き、日本の新美潤国連大使も「性的指向や性自認に基づく暴力や差別そして差別的刑罰などLGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー)に対するあらゆる形態の人権侵害を撤廃すべき」と述べた。
LGBTの人権問題に関しては、かねてから潘基文国連事務総長も「きわめて重大で無視されてきた人権上の課題」とアピールを続けてきていた。
世間で「愛ってすばらしい」とのんきにしていられるのは異性愛者の話だ。「愛」が処罰対象となる国は多く、合意に基づく同性愛行為が犯罪として処罰の対象となる国は七六以上に上る。世界各地に同性愛憎悪がはびこり、暗殺もおきている実態を二〇一一年の国連報告書が浮き彫りにした。日本を含む多くの国でも結婚できないことを含め差別が蔓延している。
日本政府は実は、国連のLGBTコアグループのメンバーで、アジアからは唯一の参加国となる。このほか、アルゼンチン、クロアチア、イスラエル、オランダ、ニュージーランド、米国、国連人権高等弁務官、さらにNGO(非政府組織)であるヒューマン・ライツ・ウォッチなどが参加しており、この閣僚級会合もコアグループが主催した。
日本政府がコアグループに所属し声を上げた意義は大きい。今後は、世界中のLGBTが愛を貫けるよう、今回の宣言を実行に移すリーダーシップを期待したい。
(土井香苗・ヒューマン・ライツ・ウォッチ日本代表/弁護士、10月11日号)