【タグ】麻生太郎、クレー協会
会長代行が暴力事件で敗訴、刑事責任の可能性も――麻生体制のクレー協会で不祥事
2013年10月29日4:50PM
二〇二〇年の東京五輪開催が決まったが、暴力指導や助成金不正受給問題などで国際的信頼を失墜させた全日本柔道連盟に続いて、日本クレー射撃協会(以下、日本クレー)の不祥事が明るみに出た。日本クレーの会長は、自ら選手経験もある麻生太郎副総理兼財務相だ。一体、何が起きたのか。
日本の著名なスポーツ団体が事務局を設ける岸記念体育会館(東京・渋谷)。その由緒ある建物の一室で起きた暴力事件をめぐる損害賠償請求訴訟で、東京地裁は一〇月一日、原告勝訴の判決を下した。
〈被告は原告に対し、三四万八三五〇円を支払え〉
被告は、麻生会長に代わって采配を振る日本クレーの高橋義博・会長代行。原告は同協会専務理事(当時)の福城一信氏だ。
事件が起きたのは二〇一二年五月七日。口頭弁論で示された両者のやりとりを再現してみよう。
高橋会長代行「インチキ執行部なんだから、ちょっと席はずせ」
福城氏「私も総務の人間だからね」
高橋氏「早く席はずせ。ほら」
そう言うなり、高橋氏は座っている福城氏に歩み寄り、その後ろ首筋を殴打したという。
さらに「あんた手上げたね」と、福城氏はそのことに抗議するも、高橋氏は
「うん、早く席はずせ」と、取り合わなかった。
そして、もう一度「手上げたね」と畳み掛ける声にこう答えた。
「うん、一一〇番でも何でもしろ。インチキ執行部。出て行け」
この暴行で、福城氏は一カ月の通院を余儀なくされた。口頭弁論で高橋氏は、当時の両者の位置関係や殴ったとされる左腕が五十肩で上がらないことを理由に殴打することは不可能と主張したが、裁判所は認めなかった。
協会会員の一人は頭を抱える。
「この判決は痛い。単に会長代行という団体のトップの不祥事というだけではない。銃砲所持の許可を受けたクレー射撃で、暴力事件が起きることは、警察の大きな関心を呼ぶ。そのことがどれだけスポーツ普及の妨げとなることか」
クレー射撃で使われる銃は、実包に散弾を使ったショットガン。猟銃でも使われる散弾銃だ。〇七年、佐世保市のスポーツクラブで起きた乱射事件で猟銃が使われ、その後の銃所持は格段に厳しくなった。
東京都内の銃砲店関係者はこう話す。
「申請や更新では、担当する生活安全課の警察官が、申請者の行状調査のために近所に聞き込みをする。銃所持の申請が出ていますが、けんかはありませんかってね。その時、暴力どころか言い争うことでもあったら、許可は下りません」
警察官は、保管場所や設備の確認のために申請者の部屋にも来る。こうした所持のわずらわしさもあり、愛好家は年々減少。そんな中で起きた今回の事件は、さらに許可を厳しくする方向に向かいかねないと会員は心配している。
それにしても、なぜこのような暴行事件が起きてしまったのか。
日本クレーでは、高橋氏がののしる“インチキ執行部”派と、麻生会長が率いる一派で、一〇年に及ぶ争いを続けていた。お互いに協会私物化の是正という大義を掲げている。そのことが影響して、今でも通常の総会議決を経て人事が決まっていない。高橋会長代行も新人事を経ない暫定執行部だ。
しかし今後、高橋会長代行の刑事責任も浮上する可能性がある。警視庁渋谷署がこの判決を受けて捜査を進めれば、当然ながら同氏の銃砲所持の許諾にも影響が及ぶだろう。一方で厳しい所持許可を行なっている警察の姿勢が問われるからだ。
訴訟は協会を相手取ったものではないが、“腹心”の敗訴に、麻生会長に代わって協会参与である麻生氏の秘書・村松一郎氏が答えた。
「判決は《違法な有形力の行使》としているだけで《左手を握って手拳で殴打したとまで認めるに足りる証拠はない》としている。刑事事件になることはありませんよ」
高橋氏は、判決について全面的に争うとして即日控訴した。
(中島みなみ・ジャーナリスト、10月18日号)
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