自衛隊が沖縄の無人島で大規模な離島奪還訓練――「中国への刺激」を懸念
2013年11月19日5:46PM
九州、沖縄を中心に自衛隊三万四〇〇〇人を動員した大規模な実働演習が一一月一日から一八日までの日程で始まった。沖縄の無人島で上陸訓練も実施される。事実上の離島奪還訓練で、尖閣をめぐる領有権で関係が悪化する中国を刺激するのでは、と懸念されている。上陸訓練は那覇市の南東約四〇〇キロにある沖大東島。米軍の射爆撃場となっている。陸自普通科連隊(歩兵)が、海自の輸送艦で島に近づいたり、空自戦闘機が射撃訓練したりする予定だ。
自衛隊による訓練は時代ごとに変遷する。冷戦中ならソ連軍の侵攻に対処することだったし、その後は対テロ対策などが注目された。そして現在の南西諸島の島嶼防衛は中国を意識しているはずだ。
侵攻対処、テロ対策と離島奪還の違いは何か。侵攻対処は対ソ全面戦争を想定したし、テロ対策も北朝鮮のコマンドー部隊に都市部や原発などを襲われたら、という映画のようなシーンを想像させた。いずれもリアリティに欠けた。
しかし沖縄で離島奪還訓練となると話は違う。尖閣諸島の領有権をめぐる中国との緊張があり、一部メディアも今回の訓練が中国を刺激しかねない、と書いている。かりに中国側も対抗して大規模な演習を実施すると、沖縄周辺の海はさらに荒れ狂う。住民にとっては実に迷惑なことだ。
そもそも「奪われた離島を地上部隊が上陸作戦で奪還する」という限定的な軍事作戦は、果たして合理的なのか。制空権、制海権を確保していれば、島は護られるというのが常識とされる。さらに日本が国土防衛の頼みとする米側も本音のところ「尖閣をめぐり日中が撃ち合うとは、ばかげた、滑稽な発想」(ジェフリー・ベーダー元米国家安全保障会議アジア担当上級部長)と見なす。米国では、上陸作戦をお家芸とする海兵隊の不要論が絶えない。自衛隊が海兵隊の真似をするのが、時代の要請なのか。
(屋良朝博・ジャーナリスト、11月8日号)