クール便の「常温配達」偽装――社内に飛び交う臆測
2013年11月29日8:27PM
常温扱いで荷物を仕分け、配達まで行なっていたと報道されたクール宅急便のヤマト運輸(本社・東京都中央区、山内雅喜社長)。荷物を顧客に届ける首都圏のSD(セールスドライバー)が疲労を隠そうともせず話す。
「クール便は通常の荷物といっしょに荷台の左右にある冷凍・冷蔵エリアに入れて運ぶのだが、そのスペースに入りきらない場合がある。それなら、複数回に分ければいいと思うかもしれないが、特に朝一番の搬入要求などに応えるためには、どうしても一度に持っていかないと間に合わない。そのため冷蔵・冷凍装置のない部分にも積んでいた」
報道直後から同社は常態化していた常温放置や配送を厳しく禁じて是正に取り組み始めた。分類専用の冷蔵・冷凍ボックスを手当し、分類にかかった時間を記録するなどして、正常化に取り組んでいる。しかし、こうした対策を取るべきだとしながらも、同社関係者の一人はこう訴える。
「センター(営業所)での常温仕分けや、SDの大口客への常温配達は、人員や設備の不足が原因。センター長ら管理職が黙認していた。つまりは会社の経費削減をドライバーやアルバイトがカバーした苦肉の策。アシスト(荷物仕分けのアルバイト)やクール便専用車のドライバーを増員しないと解決しない」
テレビで流されている動画の撮影された場所は、カメラが設置され、部外者の出入りがほとんどない。そのため社内では、こんな噂が飛んでいるという。
「事情を知らないと、外の人にはとてもできない。クール便の増加で毎年現場がパンクするお歳暮シーズンの繁忙期を前にした“社内テロ”ではないか」(同社関係者)
まさに猫の手も借りたいクロネコヤマトのクール宅急便といったところだが、その後、日本郵便でも「常温配達」の偽装が発覚した。
(中島みなみ・ジャーナリスト、11月15日号)