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ワタミ過労自殺で遺族が提訴――渡邉氏の責任も問う

2013年12月27日3:03PM

美菜さんの遺影を前に会見する森豪・祐子さん夫妻。(撮影/片岡伸行)

美菜さんの遺影を前に会見する森豪・祐子さん夫妻。(撮影/片岡伸行)

 大手居酒屋チェーン「和民」の正社員だった森美菜さん(当時二六歳)が入社二カ月後の二〇〇八年六月に自殺し、昨年二月に過労による労災と認定された問題で、当時のワタミ社長だった渡邉美樹氏(現・参議院議員)ら五者を相手取り、美菜さんの両親である森豪さん(六五歳)と祐子さん(五九歳)夫妻が一二月九日、美菜さんの死亡は会社と経営者らの安全配慮義務違反に原因があるとして約一億五三〇〇万円の損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こした。

 入社後一カ月間の残業が一四一時間という過酷な労働実態に加え、勤務時間外に渡邉氏の『理念集』と称する分厚い印刷物の暗記テストや研修会への参加を義務づけられ、心身に変調を来した末に自ら命を絶った美菜さん。会社側は昨年一一月に名古屋簡易裁判所に「損害賠償確定」の調停を申し立て。五回の調停が行なわれたが、ワタミ側は責任を認めず、謝罪もないことから一一月二五日に決裂した。

 今回の提訴では、自殺に追い込むほどの過酷な労働を強いたのが、「二四時間働け」など全従業員に自らの価値観を強制した渡邉氏個人の経営方針にあるとして、日本の過労死裁判で初めて「懲罰的(制裁的)慰謝料」も請求に組み込んだ。渡邉氏のほか、美菜さんを直接雇用したワタミフードサービス(株)の栗原聡代表取締役(当時)、ワタミ(株)の小林典史・人事部統括本部長(当時)の法的責任も問う。

 厚生労働省記者クラブで会見した森さん夫妻は「訴訟を通じて、娘の死の責任を明らかにするとともに、こういう働かせ方を許さない社会、若者を使い潰すのではなく育てる社会になってほしい」と話した。代理人の玉木一成弁護士は「美菜さんの辞令には当時のCEO(最高経営責任者)渡邉氏の名前がある」とし、会社法四二九条一項(役員の第三者に対する損害賠償責任)は免れないとした。

(片岡伸行・編集部、12月13日号)

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